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"2人でおる"に引っかかったのか、あたしの後ろで大人しくスマホ触ってた誠也くんにがぶりと肩口を噛まれた。そのままがぶがぶと噛むことは止めずに、人の髪の毛で遊んでみたり空いてる方の指を絡めてみたり。
「なに、どしたん」
『狂犬に噛まれた』
「それは比喩的な意味で？」
『いや、言葉通りの意味で』
「どんなプレイ……？」
『プレイとか言わんで。愛情表現がちょっと過激やねん、うちの狂犬』
「……だいごおめでとー」
「え？あ、ありがとうございます？」
『もうちょっとちゃんと気持ち込めてあげてよ』
「じゅーぶん込めたやろ」
『大ちゃんごめんね？』
「あ、いや、なんかこちらこそすいません、」
『なんで敬語』
「いや、なんかそこに誠也くんおるんやと思ったら急に緊張してきた」
『誠也くんに？なんで？』
「ほら、まあ、色々あるやん」
『ああ、そっか。大ちゃんからしたら先輩やもんね。しかも狂犬やしね。そりゃ緊張するか』
「そういうことちゃうんやけどまあそういうことにしとくわ」
しっかり聞き耳立てて会話を聞いている誠也くんに横目でギロッと睨まれる。そんなんやから後輩くんたちに怖いって言われるんやで。
「ていうかそっか。今誠也くん東京おんのか」
『まああと1週間で帰っちゃうけどね』
「もうあと1週間しか無いんか。早いなあ」
『ほんまにねぇ。こないだ始まったと思ったのに』
「そっかぁ。ほんならA寂しくなるなぁ？」
『そうねぇ。さみしいねぇ？……って、あ、』
「ん？」
『大ちゃん？』
「どうしたん？」
まんまと大ちゃんに乗せられてぽろっと零れた本音。ふと誠也くんの方に顔を向ければ、噛み付くことは止めてないものの、その表情はどこか柔らかくて。ていうかむしろニヤけてるし、心做しか電話の向こうの大ちゃんの声もニヤけてる気がする。
『大ちゃん？やったやろ？』
「なにを？西畑なーーんもしてへんで。なーーんもしてへんけど相変わらずやなぁ」
『うっわほんま白々しい』
「大吾よーやった」
「あざす。今度なんか奢ってくださいね」
「それはまたちゃうわ」
「なんでなんすか」
「なんでお前に奢らなあかんねん」
『あたし挟んで電話越しに会話すんのやめてくれへん』
あたしどんな気持ちで聞けばいいん、この会話。
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作者名：てと | 作成日時：2023年1月29日 17時
