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仕事が終わって急遽取って貰ったホテルで一息ついてるとスマホが鳴った。見慣れないアイコンに名前をよくよく見てみれば、それはつい数時間前に連絡先を交換したばかりのその子で。
少しだけ上がった口角を誤魔化すように、誰も聞いてへん咳払いをひとつしてからメッセージを開く。そこにあったのは、帰宅報告と今日のお礼、最後にようわからんゆるキャラみたいなうさぎのスタンプがひとつ。
そのスタンプと、かたっくるしい他人行儀な文章のミスマッチさがなんとなくおもしろくて、無理やり下げた口角は再び上がりきっていた。
何も考えず、気づけば押していた通話ボタン。
あかん。ほんまになんも考えんと押してもうた。
『あ、も、もしもし…？』
数回続くコール音に、やっぱいきなりはあかんかったかなって諦めようとしたら聞こえてきた声。まさか出てくれると思わんくて、驚きで言葉が詰まってしまった。
「………」
『あ、あれ？すえざわくん？ですよね？』
「あ、ごめんごめん。出てくれると思わんくて」
『え、なんですか、それ。掛けてきたんすえざわくんじゃないですか』
「いや、そやねんけど。いきなしやったから」
『うん、びっくりしました(笑)』
昼間はずっと泣きそうな顔して肩震わしながら俺の服掴んでたから心配やったけど、聞こえてきたくすくすと笑う声に胸を撫で下ろした。
「もう大丈夫なん？」
『あ、はい、おかげさまで。ほんとご心配とご迷惑お掛けしました』
「いや、俺は別にええよ。あんな状態の子ほっとかれへんし。どうせ楽屋戻ってもあいつらの相手せなあかんかったもん。それやったらAちゃんと話してる方が全然いいわ」
『ふふ、なんですか、それ(笑)』
受話器の向こうから聞こえてくる笑い声に、昼間見た笑顔を思い出す。目元を垂らして子供みたいに笑う顔がかわいいと思ったのは、まあ事実。
「今は？家に1人？」
『あ、いや、のぞむ……、小瀧と照史くんも一緒です。今日泊まってくれるらしくて』
「あ、そうなん、」
1人じゃないことに安心したと同時に、なんとも言えん気持ちが心の中を支配する。
昼間も思ったけど、下の名前で呼ぶ仲なんや。ほんで泊まるってなに。女の子の一人暮らしの家に男が泊まるってどういうことなん。
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作者名：てと | 作成日時：2022年11月21日 23時
