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建物を出てすぐ目の前に停めてある照史くんの車に乗り込む。同じく隣に座った望があたしの分もシートベルトを締めると、車は我が家に向かって走り出した。車に乗った瞬間に溢れてきた涙を拭うあたしを、照史くんが心配そうにバックミラー越しに見つめる。
「A大丈夫か？すまんなあ。道混んでて思ったより時間かかってもうた」
『だいじょぶ。照史くんも疲れてるやろうにごめんね？』
「俺は別にええよ。途中スーパー寄って帰ろか。今日は俺が晩ご飯作ったる！」
『ふふ、やったぁ』
「あ、そうや。A、末澤のこと知ってたっけ？」
「末澤？」
「行ったら末澤と一緒やってん、こいつ」
『今日はじめましてした。でもずっと一緒におってくれたん』
「そうなんや。1人じゃなくてよかったなあ？」
「なんも説明せんと来てもうたからめっちゃ不思議そうな顔しとったな、あいつ」
「あとでお礼と説明しといたり(笑)」
買い物も済ませて自宅に着く頃には、雨風は強いものの雷は鳴りやんでて。それでも、こんな日にはあたしが不安で眠れなくなるのを知ってる2人は、今日は泊まると言ってくれたのでお言葉に甘えることにした。
「照史どこで寝るん」
「俺どこでもええよ。なんならソファとかでもええし」
『あかんよ照史くん。ソファじゃ疲れ取れへんやろ？』
「でも他に寝れるとこ無いやろ？俺は大丈夫やで？」
『あ！のんすけがあたしと一緒に寝て、照史くんのんすけの部屋で寝たらいいやん！』
「あ、それいいやん！そうしよ！」
「いやいや、え？自分ら名案みたいな顔して言うてるけどそれだいぶやばいで？当たり前になりすぎてどんだけやばいこと言うてるか分かってないやろ？」
『「え？」』
「……将来絶対苦労すんで、ほんまに」
『「いやいやいや」』
「どこまで揃うねん(笑)」
照史くんと望が晩ご飯を作ってくれてる間、ソファに座ってボーッとする。何となく開いたラインの一番上にいたのは、さっき交換したばかりのすえざわくんのページ。
あ、連絡、しないと。忘れてたわけではないけど、なんとなくこそばゆくて送るのをためらっていた。でも心配してるかもやし、今日のお礼も兼ねてメッセージは送っとかないと。
高なる心臓はきっと初めてのメッセージに緊張してるから。初対面やのに恥ずかしいとこ見せちゃったから。
そんな風に、迫り来る気持ちには気づかないフリをして、すえざわくんにお礼と帰宅報告のメッセージを送った。
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作者名：てと | 作成日時：2022年11月21日 23時
