5. ページ5
.
「まあまあそんな怒らんと。迎えくるの時間かかんねやろ？座って待ってたら？」
先程まで座ってたソファに座るすえざわくんは、自身の隣をぽんぽんと叩いてあたしに再度座るように促した。
『あ、いや、座りますけど、え、？すえざわくんなんか用事あってこっち来たんじゃないんですか？ここいていいんですか？』
「俺は、まあ、別に急ぎちゃうし、」
ごもごもと言い淀むすえざわくんの手元には、スマホの他に煙草とライターが握りしめられていて。なるほど。そういうことか。
『あたしのことは気にせず行ってきてください？動画とか見てたら多分すぐお迎え来るやろうし』
「いや、ええよ。俺がAちゃんともうちょっと話してたいし」
あかん？とこちらを覗き込む顔があまりにも綺麗で少しだけドキッとした。言葉が出なくなって無言で首を横に振ると、熱くなった頬を見られないように慌ててすえざわくんの隣に腰を降ろした。座った時にふわっと香った、すえざわくんの甘い香水の匂いに心音が少しだけ速くなるのには、気付かないフリをして。
「ふは、耳赤っ(笑)」
『き、気のせいです！』
「そういうことにしとくわ(笑)」
『すえざわくんこそ思ってた人とちゃいますね』
「そ？俺どんな風に思われてたん？」
『もっとクールな人かと思ってました。正門くんが人見知りって言ってたん、ほんまやったんや』
「正門いらんこと言いよって……」
『ふふ(笑)』
すえざわくんのギャップにくすくす笑ってると、視界の端で外の景色が明るく光るのが見えた。瞬間、建物の中に居ても聞こえてくる雷の音。
怖いのとびっくりしたのとで、思わず隣にいたすえざわくんの服の裾をギュッと掴んでしまった。
『、あ、ごめんなさい、』
一瞬驚いた顔をしたすえざわくんが見えて、パッと裾から手を離すと優しい顔でこちらを見つめていた。
「ええよ、持ってて」
『でも、……』
「怖いんやろ？泣きそうな顔してる。遠慮せんと持っとき？」
『じゃあ、お言葉に甘えて……』
「ん、どうぞ」
少し遠慮気味にきゅっと掴むと、今度はすえざわくんがくすくすと笑い出した。
『なんで笑うんですか』
「遠慮せんと、言うてるのにそんな軽く持つからかわいいな思て(笑)」
『…からかわないでください、』
「からかってへんよ(笑)なんなら手繋いどく？」
『絶対からかってる…！』
「うそやん、ごめんごめん(笑)」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 799人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：てと | 作成日時：2022年11月21日 23時
