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「俺のこと、嫌いとかやない？」
『き、らい、ではない、です、』
「ほな俺なんか怒らせるようなことしたり言うたりした？」
『や、なんにも、』
「ほんじゃあなんで俺のこと避けるん…？」
視線が痛くて、俯いてた顔を恐る恐る上げて見えたすえざわくんは、初めて見る悲しそうな顔をしていて。そんな顔させるつもりじゃなかったのに。なかったけど、そんな顔させたのは、………あたし？
『あ、あの、』
「ん？」
『こないだ、きみくんに言われたこと、』
「横山くん？」
『きみくんが、言ってたじゃないですか、周りの目には気をつけろ、って、』
「あ、こないだ飯行ったときのやつ？」
『あれ言われるまで、なんも考えてなかったっていうか、言われて気づいたっていうか、何年この仕事してんねんって感じなんですけど、ほんまに、その時気づいたっていうか、』
「ほんで俺と距離置こう、って？」
『はい、っていうか、あんまり外では会わんほうがいいんかな、って。連絡取るだけやったら誰にも迷惑かけへんしって思ったんですけど、いろんなこと考えてる内になんて返せばいいかわからんくなっちゃって、』
「そんでラインもたまにしか返ってこんくなったん？」
『まあ、あの、はい、すいません、』
すえざわくんの顔見るのが怖くて、下に向けっぱなしの視線はこれ以上下げることもできず、次第に背中が丸まっていくばかり。
ああ、もう、なんか、こんなことで困らせて自分が情けないな。気まずすぎるしこっから電車で帰ろうかな。よし、そうしよ、すえざわくんには申し訳ないけどここで車降りよう。
『あ、あの、！あたし、！』
「よ、かったぁ〜、」
『、へ、？』
本気で車降りようと思って、シートベルトに手を伸ばすのと同じタイミングで隣から聞こえてきた大きなため息。それはもちろんすえざわくんのもので。
その大きすぎるため息に思わず隣を見れば、ため息と共にハンドルに体重を預けたすえざわくんは、さっきとは違う優しい表情でこちらを向いていた。
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作者名：てと | 作成日時：2022年11月21日 23時
