25. ページ25
.
久しぶりに通る大阪の街並みは変わったところはたくさんあるけど、そんな中で昔から変わらない街路樹の景色が、迫り来る季節を伝えてくれていた。
『わ！むっちゃ綺麗！』
「ん？」
『御堂筋のイルミネーション！めちゃくちゃ綺麗です！』
「ああ、俺はもう見慣れたわ」
『久しぶりに見たなあ。もうそんな季節なんですねえ』
「そんな季節やなあ」
『ふふ、写真撮っとこ』
信号で車が止まった隙を狙って窓の外の景色を撮っていると、右隣からあたしのじゃないシャッター音が聞こえてきた。
『……今撮りました？』
「ん？」
『撮りましたよね？』
「なんのこと？」
『とぼけても無駄ですよ？』
「楽しそうなAちゃんかわいかったんやもんしゃあないやん」
『なっ、、またそうやってすぐからかう』
「からかってへんて」
『あんまりからかいすぎるとその気なくても女の子は本気にしちゃうんですからね。気をつけてくださいね』
「本気にしてくれてええんやけど」
『、え、？』
半分冗談、でも半分本音。そんな言葉にまさかの返事が返ってきて勢いよくすえざわくんの方に顔を向けると、言った当の本人は涼しい顔して車の運転を再開していた。
今のは本気？それともやっぱりからかわれてる？
もうわからへん。すえざわくんの気持ちも、………あたし自身の気持ちも。
しばらく無言が続く車内で、最初に言葉を切り出したのはすえざわくん。相変わらず視線は進行方向を向いたまま。
「Aちゃんさあ、俺のこと避けとうやろ」
『え、』
バレてへんと思った。、っていうのはまあ無理な話なのはわかってて。でも普通に話してくれるし、送ってくれるとか言うし、案外気にしてないんかなって思ってたのは、どうやらあたしの勘違いやったみたい。
『あ、ぇっと、』
「ラインも全然返してくれへんし、今日だって会った瞬間目ぇ逸らすし」
『あ、あの、』
「俺のこと嫌いなんやったらそれでもええよ？……いやあんま良くないけど。良くないけど、そうやないのに突然シカトされんのはさすがに傷付くんやけど」
『き、きらいなんて、！そんな、！』
順調に走っていたと思った車は、スピードを緩めて路肩の空いてるスペースへと止められた。イルミネーションの光で照らされたすえざわくんの視線は、俯いていてもわかるぐらい痛い程にまっすぐこっちを見ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 808人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：てと | 作成日時：2022年11月21日 23時
