世界は恋に落ちている (ページ24)

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『ぁ、あの、じゃあ、ご迷惑じゃなければ、お願いします、』

「ん、全然迷惑ちゃうよ。ありがとう」

『あ、こちらこそ、』

「なにそれ(笑)」

『え、あたしなんか変なこと言いました？』

「なんでそんな急に他人行儀なん(笑)」

『え？』

「ふは、俺の車こっち(笑)」

『あ、え、？はい、？』

案内された車の助手席のドアを開けてくれたすえざわくんに思ったのは、こういうの慣れてるんやろうなぁって。めちゃくちゃスムーズやった。まあすえざわくんぐらいの人ならあたしだけじゃないか、こういうの。

「……慣れてるなあって思っとうやろ」

『あ、え、？』

「図星やん(笑)」

『あー、ちょっぴり？』

「まあ否定はせえへんけど。でも今はAちゃんにだけやで、こういうことすんの」

それってどういう意味？、なんてそんなうぬぼれたこと、聞けるわけが無い。

赤くなってるであろう顔を見られへんように少し俯きながら助手席に座る。その行動がバレたんか、運転席側へと回ったすえざわくんがくつくつと笑ってるのが見えた。

『……わらいすぎです』

「ごめんごめん、Aちゃんおもろくて(笑)」

『年下からかってたのしいですか』

「からかってるわけちゃうんやけど、ごめんな(笑)」

『次笑ったらもう口聞かないです』

「うそやん、それは困るわ」

シートベルトをするために体を動かしたすえざわくんからふわっと香るのは、最初に会った時と同じ甘い匂い。この匂いいいな。この前も思ったけどなんか落ち着く。

『いい匂いですね』

「ん？」

『すえざわくんの香水？かな？甘い匂いします』

「キツい？今日そんな付けすぎてへんはずやけど」

『あ、いや、そう言う意味じゃなくて、なんていうか、好きな匂いやなって』

「ほんま？Aちゃんこの匂い好き？」

『はい！好きです！』

「ふは、そっか(笑)」

『え、なんで笑うんですか』

「いやいや、なんもないよ(笑)」

『え、めっちゃ笑う』

「ほんならAちゃんと会う日はこの香水付けてくるな」

『あ、それは普通に嬉しいかも』

あたしの一言一言にずーっと笑いながら運転してるすえざわくんの顔がどっか嬉しそうなのは気のせいなんかな。気のせいじゃないといいな、なんて。

車内に香るすえざわくんの甘い匂いと、好きなんであろうバンドの曲が流れる。未だにすえざわくんの車に乗っているのがどこか不思議な感覚で、なんとなく気持ちがふわふわしていた。