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Aちゃんが席を立ってからしばらく経っても中々帰ってこんくて。まあ女の子やしいろいろあるやろしなぁとは思うものの、お酒も飲んでたからちょっと心配になって様子を見に部屋を出た。
案内板に沿ってトイレまで向かう途中で目に入ってきたのは、なんか言い合いしてる男女3人組。邪魔やなそんなとこで喋っとんなや、なんてよくよく目を凝らしてみれば、女の子の方はさっきまで一緒にいてたその子で。
なんともなくて良かったって安心感と、Aちゃんに絡んでる男2人への苛立ちと。誰やねんこいつら場合によってはしばき倒すなんて思って男2人の顔を見たら、それはめちゃくちゃお世話になってる先輩とよく知る友人の姿やった。
『ほんまなにこれ？なんで2人も来たん？帰るとこやったんちゃうの？』
目の前には横山くんと丈、俺の隣にはAちゃん。
いやほんまになんなん。目の前におるだけでも緊張しとったのに、隣とかやばいやろ。
横から見てもかわいいなとか、なんかええ匂いするなとか、細すぎやんちゃんと食ってるんとか、今日の雰囲気やっぱり好きやなとか、頭に巡るんはそんなことばっか。中学生か、俺は。
「まあ色々聞かなあかんやろ、保護者としては」
『保護者淳太くんやもん。きみくんちゃうもん』
「へりくつ言うな」
そう言う横山くんの顔は、言葉の強さとは裏腹にほんまにAちゃんのこと心配してる優しい顔しとって。AちゃんはAちゃんで明らかに心許してるみたいな喋り方やし。そんな2人の関係性に、芽生えたちょっとした嫉妬心。
『なんでここおるん』
「だから丈と予定合ったから言うたやん」
『なんでこの店なん』
「お前なぁ、この店教えたったん誰や思てんねん」
『……きみくん』
「せやろ？」
正論言われて不貞腐れたのか、Aちゃんの唇は誰が見てもあからさまに尖ってた。拗ねたら唇尖らすのクセなんかな。なにそれめっちゃかわいいやん。
「えっと、僕からも１個いいですか」
「あかん」
「丈に聞いてへんねん」
「なんでやねん！俺にも聞けや！」
『丈くんうるさい』
「おま、！ほんましばくぞ！」
『きみくん、丈くんのことどういう教育してんの？』
「あー！もうお前らストップ！とりあえず1個ずつ片付けていこか」
各々、っていうか主にAちゃんと丈がやけど、言いたいこと言いまくっていよいよ収拾がつかんくなってきたこの場を、呆れた顔して横山くんが治める。
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作者名：てと | 作成日時：2022年11月21日 23時
