40. ページ41
.
『れんれんと2人って初めてちゃう？』
「やっぱそうやんな？俺もおんなじこと思ってた」
『なんか急に緊張してきたなーきんぷりの永瀬廉と2人でご飯かー』
「絶対うそやろ」
『うん、嘘』
「お前のそういうとこきらい」
『えへ、ありがとう』
「褒めてへん」
へへへって笑うAは、さっきよりは元気になった気もせんでもないけど、やっぱり本調子ではなさそう。話しにくい内容って言ってたし、俺から話切り出してあげなあかんねやろな、これ。ほんま手かかる奴。
「ほんで？なにがあったん？」
『うーん、あのね、最後まで怒らんと聞いてくれる？』
「内容によるけど」
『え、じゃあもう話さん。絶対怒るもん』
「うそやって。わかったわかった。最後まで聞いたるから」
『あのね、』
昨日久しぶりに友達と会えたこと、話が盛り上がりすぎた上に呑みすぎて帰りが遅くなったこと、それに対して誠也が怒って喧嘩して向こうが出ていったこと。
全て話し終えたAは、酒も入ってないのにポロポロと涙を流し始めていた。
『あたしが悪いのはわかってんねん』
「うん、せやな。完全にAが悪いな」
『もうちょっと慰めるとかないん？』
「俺、大吾とか正門とちゃうもん。Aのこと甘やかしたことあった？」
『……無い』
「せやろ？だから俺は間違ってることは間違ってるって言うし、あかんことはあかんて言うで」
『……その方がたすかる。ありがとう』
「珍しく素直やん」
大吾や正門みたいに、優しい言葉掛けて慰めてあげるとかは俺にはできひん。Aと俺の関係ってそんなんじゃないし。
でも、話聞いてあげてあかんとこはあかんてはっきり言ってあげれる友達、1人ぐらいおった方がいいやろ？俺らってそういうのやと思うねん、お互いに。
『今回のことに関しては誠也くんはなんも悪ないんよ。怒るのも当然やと思うし、謝らなあかんのも完全にあたし』
「ほなはよ謝らな。時間経てば経つほど謝りにくくなんで」
『せやねんけどさあ。なんやろ、誠也くんの昨日のあの目と声がほんまに怖くてさ、今まで見たことない顔してて。またあの目で見られたらどうしよって思ったら連絡する勇気ないんよね』
「ほんならこのままでいいん？Aが謝らなずーっとこのままやで」
『せやんねぇ……、せやねんけどなぁ……、』
テーブルに突っ伏したAの瞳からは、一度引いたと思った涙が再び零れ出していた。こんな泣いてるの初めて見たかも。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 639人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：てと | 作成日時：2022年9月3日 5時
