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アイスとお水と、ついでに明日の朝ごはんも無事買い終え、マンションまで5分の距離を歩いて帰る。生ぬるい夜風でも、お酒で火照った今の体には心地いい。
お風呂入るのめんどくさいなあ。でも入らないと明日朝起きて後悔するの自分やしなあ。こんなに呑むはずじゃなかったのになあ。明日の撮影、お昼からでよかったなあ。
酔ってる時ほど思考は明確になるらしく、いろんなことがぐるぐる脳内を駆け回る。そんなことをしている内に家の前まで着いていた。誠也くんが誕生日にくれたキーケースから取り出した鍵を差し込んで扉を開く。、とそこにあったのは見慣れたスニーカーと、うっすら点いているリビングの灯り。
あれ。今日来るって言ってたっけ。……言ってたな。言ってた気がしてきたな。
お店を出た時点で日付は変わってた。そして見た目で分かるほどの真っ赤な顔した酔っぱらい。おまけに忘れてたとは言え、この時間やのに連絡はせず。………終わったやん。
先に寝ててくれてる事を願いながら、そーっとリビングの扉を開けそーっと入ると、ソファでスマホを触る大きな瞳と目が合った。
ああ、起きてた。最悪や。その表情は明らかにご機嫌がよろしくないご様子。
『あー、せーやくんただいまー、』
「どこ行ってたん」
普段はうるさいぐらい高いくせに、どこから出てるんって思う程に低い声に少し肩が跳ねてしまった。こんな怒ってるとこ初めて見た、かも。
『あのー、ほら、大学ん時の友だちおるやん？何回か写真見せた子。久しぶりにお互いの予定合ったからご飯食べてきたん』
「ふーん？今何時やと思ってるん」
『あのね、久しぶりやから話盛り上がっちゃってね、気づいたらこんな時間やったんよね』
「俺のライン気付かんぐらい？」
『え、あ、』
急いでスマホを確認すれば、通知欄には誠也くんからのすごい量のメッセージと不在着信が入っていた。心配と迷惑を掛けてしまったことにサッと血の気が引いたのが分かった。
『あ、ごめん、なさい。全然気づかんかった、』
「別にええけど」
口ではそう言うけど、俄然スマホを見たまま目は全然合わせてくれへんくて。まだだいぶ酔いが残ってるのもあって感情はいつもより揺さぶられやすく、気づいたら涙が頬を伝っていた。
違う。あたしが泣くのは間違ってる。悪いのは完全にあたし。我慢しようとすればするほど、涙は止まることを知らない。
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作者名：てと | 作成日時：2022年9月3日 5時
