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「Aちゃん、ごめん」
中洲の小鳥を眺めながら、隣に座ったさくちゃんがぽつんと言った。
「……子供扱いしないでとか言いながら、俺めっちゃ子供だよね。あんなことで怒ったりして」
「さくちゃん……」
彼はふっと息を吐き、こちらに視線を向けた。「Aちゃんに見合う男になりたかっただけなのに、結局八つ当たりみたいなことしちゃった。ほんとにごめんなさい」
私は首を振った。「私こそ、さくちゃんの気持ち分かってなかった。ごめんね」
私たちはしばらく黙って、対岸の高層ビル群を眺めていた。
「……俺ね。Aちゃんといたら……ううん、Aちゃんのこと考えるだけで、すごく楽しくて、どきどきして、なんかこう、胸が切なくなる感じがする」
河原を吹き抜ける風が、彼の前髪を揺らした。
「中学生の時から、ずっとそう。……でもAちゃんは大人だから、俺といても、俺ほどはどきどきしてないだろうなって、思ってた」
「……私だって、さくちゃんといたら楽しいし、どきどきするし、胸がぎゅってなるよ？」
さくちゃんは照れたように、河川敷のブロックを長い指でなぞる。「俺が大人になっても、その頃にはAちゃんはもっと大人になってて、俺は永遠にAちゃんに見合う男になんてなれないのかなって思っちゃって。……そしたらちょっとだけ、さみしくなった」
「……さくちゃん」
彼が静かに顔を上げた。
「私は、さくちゃんが子供でも大人でも、さくちゃんが好きだよ。だって、さくちゃんがさくちゃんだから、好きになったんだもん」
私は彼の手をそっと握った。
「今までも、これからも、私に見合う男の人はさくちゃんだけだよ」
私を見つめるさくちゃんの大きな瞳が潤んでくる。
彼は慌てたように一度鼻をすすると、私の体をぎゅっと抱き寄せた。「……だめ。いまAちゃんの顔見たら泣いちゃう」
「泣いてもいいよ」
「だめなの」
ビルの向こう側に夕陽が落ちて、冷たい北風が吹き始める。
すぐさま、さくちゃんが自身のダウンコートを私の肩に掛けてくれた。
「さくちゃんが寒いでしょ？」
「いいの」
彼は言い聞かせるように言った。「これくらい、大人ぶらせてよ」
「ありがと」私は微笑んでコートを羽織った。
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真澄(プロフ) - 浬さん» コメントありがとうございます。5年前のいがさくのお話ですね！ちびさくにお兄ちゃんぶるガリさん書いててすごく楽しいので、読んで頂けたら嬉しいです♪ (2021年2月26日 9時) (
レス) id: 0317dce8be (このIDを非表示/違反報告)
浬(プロフ) - 仲直りはチョコの味キュンキュンしました！今回は昔のいがさくのお話ですかね？わくわくします(^ ^) (2021年2月22日 13時) (レス) id: 2a1dda425f (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» コメントありがとうございます。キャンパスライフ早く書きたいのですが、DKたちを卒業させるのももったいなくて悩ましいです(笑) (2021年2月13日 21時) (レス) id: d37291436f (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 浬さん» お久しぶりです！コメントありがとうございます。雪の降る日はけっこう直感で書いたのですが気に入って頂けて良かったです♪今回のも楽しんでもらえたら嬉しいです！ (2021年2月13日 21時) (レス) id: d37291436f (このIDを非表示/違反報告)
爽 - またまたお久しぶりです。仲直りはチョコいいですね！更新待ってますね。大光君とのキャンパスライフも楽しみです(^^) (2021年2月11日 11時) (レス) id: 5e1c872bd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年1月15日 16時
