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さくちゃんがソファの上から手を伸ばし、私の体を捕まえた。「せっかくのお休みなんだから、Aちゃんともっと一緒にいたい」
抗う間もなく、気付けば私はさくちゃんの膝の間に収まっていた。長い腕に後ろからすっぽりと包まれている。耳元で囁いた彼の低い声が体の奥を揺らした感覚がして、肩がびくんと跳ねた。
さくちゃんはそんな私にふっと笑みを零すと、大きな手で私の髪を掻き分け、首筋に優しく一度口付ける。
左耳の後ろ、自分では見えない場所。
くすぐったくて、心臓がばくばく脈打ち始めて、私は彼の腕から逃れようとした。
最近の彼は、何か不思議なものを身にまとっている気がする。
雰囲気と言ったらいいのか、オーラと言ったらいいのか。
少年ではなくて、大人の男性でもなくて、それは結局なんだかよく分からない危うい均衡みたいなものだった。
私は少し怖かった。さくちゃんが怖いのではなく、その未知の何かが私を呼び寄せているような錯覚がすることが、ちょっとだけ怖かった。
さくちゃんはさらに強く私を抱き寄せると、ぽつんと呟く。「俺、早く大人になりたい」
「……え？」
「早く高校卒業したい。大学も卒業したい。早くAちゃんみたいに働きたい」
私の肩に顎を乗せたその顔が幼い子供みたいに拗ねた表情をしていて、私はなんだか安心した。
「『青春は戻らないらしい』ってCM、覚えてる？ 私なんて、今からでも高校や大学時代に戻りたいけど」
「じゃあ、Aちゃんが高校生になってよ。それでもいいや」
さくちゃんはよく分からないことを言って、はぁ、と溜息をついた。
「もう制服はきついって。コスプレになるよ」
「そういう意味じゃない……」
なんとなく雰囲気に流されてしまい、私はさくちゃんの胸にもたれ掛かろうとした。
しかし角度が変わった視界の内側に、ちょうどテーブル上の問題集が入り込む。
慌てて彼の腕を解き、よろけながら立ち上がった。「はいっ、終わり！ 高校生は勉強しましょう！」
さくちゃんはむぅっと唇を結んで、「お母さんみたい」と不満気に私を見上げる。
「失礼ね。私、さくちゃんと６つしか違わないんだけど」
「その６年がおっきいじゃん……」
さくちゃんはそう呟くと立ち上がり、私を正面からぎゅっと抱きしめた。「……あとちょっとだけ、こうしてる」
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真澄(プロフ) - 浬さん» コメントありがとうございます。5年前のいがさくのお話ですね！ちびさくにお兄ちゃんぶるガリさん書いててすごく楽しいので、読んで頂けたら嬉しいです♪ (2021年2月26日 9時) (
レス) id: 0317dce8be (このIDを非表示/違反報告)
浬(プロフ) - 仲直りはチョコの味キュンキュンしました！今回は昔のいがさくのお話ですかね？わくわくします(^ ^) (2021年2月22日 13時) (レス) id: 2a1dda425f (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» コメントありがとうございます。キャンパスライフ早く書きたいのですが、DKたちを卒業させるのももったいなくて悩ましいです(笑) (2021年2月13日 21時) (レス) id: d37291436f (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 浬さん» お久しぶりです！コメントありがとうございます。雪の降る日はけっこう直感で書いたのですが気に入って頂けて良かったです♪今回のも楽しんでもらえたら嬉しいです！ (2021年2月13日 21時) (レス) id: d37291436f (このIDを非表示/違反報告)
爽 - またまたお久しぶりです。仲直りはチョコいいですね！更新待ってますね。大光君とのキャンパスライフも楽しみです(^^) (2021年2月11日 11時) (レス) id: 5e1c872bd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年1月15日 16時
