05.vision of sugarplum ページ5
┄
｢着いた｣
『え、ここって』
だいぶ階段を降りて着いた場所。
やっと手が離れて安心する。
平野くん握力ほんとに強くて握り潰されるかと思ったわ。
真上を見れば、プラプラと揺れる"保健室"の看板。
疑問と共に冷や汗が垂れる。
一歩先でする薬品の匂いに息が詰まりそうだ。
何を話せばいいか分からなくてずっと黙ってたから
聞いていいかも分からないし。
あーー、もう。
『なんで、保健室？』
私が勇気を出して聞いたそれには首を横に振って
腕を掴んだまま部屋の中へ進んでいく。
ヤなんだって。
本当に嫌いだ。
この砂糖菓子みたいに甘ったるい匂いも
薄ピンクに塗れたこの空間も
少し匂うタバコの香りも、全部。
ほんっっっっっとに嫌い。
久しぶりに嗅いだ匂いに目眩がしてくる。
外をちょっと出た所に喫煙所があるせいか
風に乗って窓からタバコの匂いがする。
そもそも、こんな誰かを救護するようなとこの
近くに喫煙所なんて作るなって話。
｢失礼しまーす、って誰も居ないじゃん｣
「絆創膏どこにあったかな〜、あ見っけ」
"誰もいない"
それを聞いてホッと胸を下ろした。
待って、絆創膏？なんのために？
もしかしてだけど平野くんさっきのアレで怪我した？
最低だ、私。今自分のことしか考えてなかった。
私の腕をキツく掴んだまま棚に手を伸ばして
青い引き出しに入っている絆創膏を取り出す、と。
『え？ちょっなに、きゃ！』
「ちょっとごめん」
いきなり振り返った平野くん。
制止する私の抵抗虚しく
平野くんが私の腕に触れてYシャツを捲り出した。
肘より上まで捲り上げられた腕に触れる感覚が
くすぐったくて体をよじらせれば、動くなって言われた。
…高２にもなって、まるで赤ちゃん扱いだ。
「…やっぱり！痛そう、痛くなかった？」
『、え』
どこで見つけたのか分からない消毒液を少し垂らされて
垂れる前にティッシュで拭き取る平野くん。
少し染みた感じがするから、擦り傷でもできてたっぽい。ぜんっぜん気付かなかったけど。
「痛かった？ごめんな。はい、できたよ」
『……ありがとう』
ほぼ初対面のイケメンに手当されるとか
幸せ者め！って感じ、なんだろうけど
流石にいきなりすぎて。嬉しかったけど！
そんなことより早くこの空間から出たい。
だって、早く出ないと
「…あれ、平野くん？」
こうなってしまうから。
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mun(プロフ) - このお話大好きです！これからも楽しみにしてます！ (2020年10月26日 17時) (
レス) id: 0e3b0babab (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - コメントありがとうございます！パスワードは作品を見て頂ければ分かると思います。 (2019年1月3日 13時) (レス) id: d826207ec4 (このIDを非表示/違反報告)
みさと(プロフ) - パスワード知りたいです！ (2019年1月3日 12時) (レス) id: f4a3a3a2e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏 | 作成日時：2017年9月10日 9時
