11.隣にいるのは ページ11
┄
"遥香ちゃん"
その一言だけで、頭を鈍器で殴られたみたいだ。
ハハッって思わず乾いた笑いが漏れて、惨め。
遥香ちゃん遥香ちゃんって
じゃあその遥香ちゃんは優太のなんなの？
ずっと一緒にいたのは、私なのに。
勿論保健室にだって一緒に行ったことなんか
何回もあるしあの2人が話してる所だって
沢山見てきてるのに。でも、違った。
あの日、あの時私が見た優太は何かを決心した顔だった。
あの日の優太は何を見て、何を知って、どうして、
知れないきっかけなんてなんでもよかった。
いつか知っても笑い飛ばせるように隣にいたんだから。
今だってナベちゃんのこと好きになるか忠告して
心配してくれたのかと思っちゃった。
大丈夫だよ、ナベちゃんなんか好きにならないよ。
だって私優太が好きだから、なんて言えるはずないのに。
そんなに遥香ちゃんのことが好きなら
好きなんだってハッキリ言ってくれればいい。
そしたら私だって、ずっと知ってたよって答えてあげる。
いつかの答え合わせをさせてよって言える。
ううん、違う。知りたいなら私が聞けばいいだけだ。
優太の口から聞きたくないから、聞けないだけ。
結局私はずっと意気地なしのまんまで
自分の想いは優太に気付かれないようにズルして
こうやって茶化して聞くことしか出来ないのは
優太が誰を好きでも隣に居たいっていう、私のエゴだ。
『ほんっっっと優太は遥香ちゃんのこと好きだよね』
「まっ優しいしな、みんな好きっしょ」
テレビを見てる優太振り返らずに即答した。
否定、しなかった。
"みんな"ね？みんなってなあに？
優太みたいにガチで恋してる人の話？
あんなルールとか自分の正義とか守る優太が
破ってるものは？ねぇ、それって誰のため？
お笑い番組のゲラと優太の笑い声だけが響き渡る。
私はキッチンに立ちすくんだままで。
核心に迫りたいのにそれだけはいつだって聞けない。
聞くタイミングならいつでもあるのに。
一歩踏み出すのが怖いから？
それともこの関係を崩したくないから？
あーもう
「Aー？お前の好きな五千頭身出てきたぞー？」
『え！もう？ボーッとしてた！今行くー！』
こうやって私の前でだけ笑っててくれたらいいのに。
本当は分かってる。優太は私のこと好きじゃないって。
それに気付かされる度にまた黒い気持ちが私を覆って
私が私じゃなくなるみたいで嫌になるから
だから、会いたくなかったのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1560人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mun(プロフ) - このお話大好きです！これからも楽しみにしてます！ (2020年10月26日 17時) (
レス) id: 0e3b0babab (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - コメントありがとうございます！パスワードは作品を見て頂ければ分かると思います。 (2019年1月3日 13時) (レス) id: d826207ec4 (このIDを非表示/違反報告)
みさと(プロフ) - パスワード知りたいです！ (2019年1月3日 12時) (レス) id: f4a3a3a2e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏 | 作成日時：2017年9月10日 9時
