candy box2(連載) (ページ8)

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兄者の話を聞きつつ、俺は必死にメモを取っていた。明日の生放送の段取りを、しっかり頭に叩き込む為に。

昨日ラジオでうっかり、Aちゃんの名前を口走ってしまった俺が原因で、騒ぎは思いの外どんどん膨らみ、今や収拾がつかない事態になっている。

これを招いたのは、俺の認識力の低さにあって。折角、Aちゃんが俺たちの活動の邪魔にならない様、あれこれ手を焼いてくれていたのに、それを俺が全部台無しにしてしまった。多分、いつかはAちゃんの事を気軽に話せたら良いな、なんて心のどこかで考えていたからだろう。

兄者におっつん、そして沢山の知り合いに心配と迷惑をかけて、Aちゃんはそれ以上にショックを受けてしまっていて。ちょっとでも早く安心させてあげれる様に、俺はがむしゃらに頑張った。

いつもニコニコ笑いかけてくれるAちゃん。
その優しくて大好きな彼女の笑顔を、俺自身が奪ってしまった事実は、逃げ出したくなるほど辛い。昨日の夜、俺たちと過ごしたいって想いを押さえ付けてまで、離れる事を選ぼうとしたAちゃんの姿に、気が狂って心が張り裂けそうになったくらい。

それでも、こんな馬鹿な事をした俺でも、Aちゃんは一緒に居るという選択肢を選んでくれた。沢山苦しい思いをさせてしまっているのにも関わらず、俺たちの大切な物を守りたいって。俺たちを守りたいって。

涙を堪えて精一杯笑おうとするAちゃんに、泣きそうになったのは俺の方だ。だから今度こそ、Aちゃんの明るい笑顔がまた曇ってしまわない様、俺自身が１番頑張らないといけない。守られてばかりじゃ嫌なんだ。

俺に弟か妹が出来たらって、幼き日の決意をもう一度この胸に宿す。何年経っても色褪せない記憶は、Aちゃんの存在がよりそれを鮮明に甦らせた。

冷静な兄者やおっつんに比べたら、俺は全然頼りないと思う。まだまだ考えが足らない部分も多いし、その場の感情に振り回される事だって少なくない。

だけど、それに胡座をかいてるだけの俺じゃない。俺だってやるときゃ、やる男だ。Aちゃんの為になら、例え火の中、水の中。どんな逆境だって乗り越えてやる。

だから、これからも側に居てくれないかな？
色んな思い出を抱え切れないくらい、沢山作って。
Aちゃんとこの先ずっと、かけがえのない毎日を過ごしていきたいから。