candy box2(連載) (ページ7)

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騒動から一夜明けた今日。俺は朝から弟者と話し込んでいた。理由は勿論、昨日の一件についてだ。

偶然ラジオ放送中に、存在が知られてしまった妹のA。今まで隠してきた内容だった事もあり、一人が反応すれば、芋づる式にエライ騒ぎになっていって、2broのチャンネルは類を見ないほど混乱を極めていた。

Aの話題を一切出さなかったのは、別に彼女が問題な訳じゃなく。ただ単に、俺たちがAを巻き込みたくなかったからだった。そりゃ身バレについて考えなかった訳じゃないし、リスナーの事が気掛かりだったのもある。それでも一番の理由は、可愛い妹が特殊な兄貴を持っていたとしても、平和な日常を送れるようにと願っていたからだ。

だが今はそれが崩れ去り、Aの存在が明るみに出てしまった以上、悠長な事は言ってられず。明日の生放送の為に、俺も弟者も必死で頭を回転させていた。
妹のAは気立てが良く、美人で可愛くて、何でも一生懸命に取り組む頑張り屋さんだ。俺たち義理の兄を、本当の兄の様に慕ってくれて、大切に想ってくれている。だからこそ健気なAの為にも、俺たち自身がしくじる事は許されない。

準備は万全に。どんな小さな綻びも見逃す事の無いよう、当日の流れを幾度となくチェックする。話の回し方や段取り、Aへのフォローに至るまで全て。
やり過ぎなんて少しも思わない。寧ろ、他に何か見落としが無いか教えて欲しいくらいだ。

どれもこれも、本音を言えば全部Aの為。俺たち以上に傷つきショックを受けている彼女を、少しでも多く安心させてやりたい、その一心で。

今更、Aの居ない生活なんて考えられないんだ。そりゃいつかは嫁に出たり、逆に俺たちの誰かが結婚したりするかも知れない。そうなれば、今までの様な生活を送るなんて出来ないだろう。
だからこそこの一瞬を、共に過ごせる貴重な時間を、俺は大切にしたい。

普段は照れ臭くてそんな事一々口に出してねェし、今は感情に流されず冷静にならなきゃいけない時だ。だけどAの笑顔を守る為なら、どんな事だってやってやろうじゃねェか！くらいには心が燃えている。

そういや俺も大概熱くなる所があったなと思い出せば、僅かに苦笑が溢れる。だが今回はその役目を弟に譲り、理性的で頼れるカッコいい兄貴として俺は振る舞う事にした。

A、何も心配する必要はねェよ。守ってやれるくらいの甲斐性は俺にだってあるんだからな。
俺はそう、ひとりごちた。