candy box2(連載) (ページ5)

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「うぃっすー」
俺は適当な挨拶を口から出しながら、ボイスチャットMumbleの三人称グループに入室した。

「あっ、ドンさん！どうだった？」
「2broの様子は大丈夫だったの？」
入室して早々、ぺーさんと鉄塔さんが矢継ぎ早に質問を飛ばしてくる。皆を心配していたのは、何も俺だけじゃなくて。この2人も、仲の良い実況仲間の様子を気にかけていた。

「うん、まぁ多分大丈夫……っぽいかな。兄者さんは兎も角、弟者もそんなに落ち込んでなかったから。生放送は明日の夜にするっつってた。でもいつもより、ちょっと顔が疲れててさぁ、あんまりお邪魔するのも悪いし早々に帰ったよ」

2人の少しだけ疲労が浮かんだ顔を思い出しながら、俺はメンバーに今日の事を報告する。おついちさんは？と聞かれたけど、その時に居なかったおついちさんの様子は、兄者さんから聞いていて。それを、そっくりそのまま伝えた。心配かけさせない様にしてるにしても、思いの外、彼らは元気そうで。俺も、ぺーさんも鉄塔さんも、とりあえずホッと一息つけた。

けど俺たちとは違って、2broは顔出ししてないし、チャンネル登録者数も桁違い。身バレしてしまった時の事を考えると、怖くなるのも当然だと思う。上手く解決出来れば良いなぁって意識を飛ばしていたけど、鉄塔さんの声で我に帰る。

「妹さんとは会えたの？彼女も大丈夫そう？」

心配そうに尋ねた鉄塔さんには悪いけど、2broが隠してきた秘密の妹さんには会うことが出来なかったと、正直に話す。家に行った際、今は気分転換しに外出中だよって弟者が教えてくれたんだ、って。
そっかぁ……妹さんも大変だもんね、と漏らしたぺーさんの声は、いつもより優しく聞こえて、見えなくても俺は画面越しに頷いた。
実況者の兄と友人を持っていても、本人は完全に一般人らしいから、今回の件で相当参ってしまっているんじゃないかな。まだ見ぬ妹さんを頭で想像しながら、心で密かに応援しておく。

そしたら、今度はAさんの顔が頭に浮かんで。胸の奥が何だかムズムズしてしまう。そんな気持ちを隠そうと話を続けていたけど、

「てかドンさんも、ちょっと元気出たくない？」
「確かに。お前が2broかよ！って思うくらい、取り乱して焦ってたのに。何かあったの？」

突然飛び出した質問に、俺は動揺して椅子から滑り落ちそうになる。誤魔化そうと思ったのに、目敏い2人に敵う訳も無く……。俺は2bro家からの帰り道にあった出来事を、観念して伝えることにした。