candy box2(連載) (ページ3)

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俯きがちだった顔を上げ、せいじさんへと視線を向ける。
「だから、せいじさんは優しいです。自分のことの様に、お友だちを心配してあげて。お友だちだって、きっと嬉しかった筈です。自分の事を心配して、わざわざ会い来て下さったんですから」
私だったら、とっても嬉しい。今こうして、せいじさんが側に居てくれるみたいに。

そう言って微笑む。上手く笑えてるのか分からないけど、せいじさんの肩の荷が少しだけでも軽くなればいい。まだ彼の事をよくは知らない私。だけど落ち込んでいる姿より、底抜けに明るい彼の方が、ずっと素敵だと思った。

透き通ったつぶらな瞳が、ほんの僅かに見開かれる。そして視線が交わったまま、せいじさんが柔らかく笑う。
「ありがと」
一言だけだったのに、その言葉には全ての気持ちが含まれてる気がして。何だかこっちまで暖かい気分にさせてくれた。お礼を言わなきゃいけないのは、私の方だ。そう思っていたのに、せいじさんは話を続ける。

「俺はAさんの事よく知んないけど、家族も友だちも、そんなAさんに救われてるんじゃないかな。だって、沢山悩んでどうにかしようって頑張ってのが伝わるもん。確かに役に立つのって難しいよね。自分が良かれと思った事が、相手にとっても同じだとは限らないし」

そう言いつつ、彼は静かに目を伏せた。そして今は閉じられた、拙い文章が書き殴られたノートの背を、慈しむかの如く指を滑らす。

「だけど、自分の為に誰かが必死になってくれてる、心配してくれてるって分かると、それだけで十分だったりするんだよなぁ。Aさんの大事な人だって、君が頑張ろうってもがいてる事、しっかり伝わってると思う。皆がさ、カッコ悪いって言っても、情けないって言ってきても、俺は知ってるから。Aさんが皆を大切に思ってて、努力しようとしてる事」

だからさ、Aさんはそのままで居れば良いんじゃないかな？変に取り繕わなくても、そんなAさんを皆は大好きだと思うから。

せいじさんの一言一言が、ささくれだった胸の奥をそっと覗いて癒してくれる。偉そうなこと言ったけど、俺もA さんに言われて気づいたんだ、なんて。恥ずかしそうに照れて笑って。

彼に向けて漸く言えた、ありがとうございますの言葉は、何だか震えて頼りなく聞こえたけれど。ぎこちなくでも、優しく頭を撫でてくれる掌に、やっと心の底から笑う事が出来た。