【実l況l者】キャンドルに燈して【短編集】 (ページ2)

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アスターは桃色【ky】ページ2

「…おはようございます、キヨくん」

聞き慣れた声がした。
とろりと伸ばした蜂蜜みたいな、甘そうで少し掠れた寝起きの声だ。
ゆっくりと体を彼女の方に寄せてみる。
触れた肌は柔らかくて暖かく、心地良かった。
柔らかな髪の毛が鼻先を擽れば、シャンプーの匂い。
無性に愛しくなって、首元に顔を寄せて擦り付いてみた。

「ん…」
「…A？」
「くすぐったいよ」
「…嫌ならやめるけど？」

やめないで、と言わんばかりに俺の方に体を寄せてくるA。
いつもなら恥ずかしがって絶対にしてこないのにな、とかぼんやり考えながら、濃くなった彼女の香りを深く深く吸い込んだ。

「珍しくない？そっちからくっついてくるの」
「だってキヨくんが布団とるから寒かった」
「マジ？うわ、ごめん、冷えたっしょ」
「…嘘だよ、むしろ私のが布団とってた」

嘘かよ、と呟くように笑うとAもつられる様に笑う。
彼女以上に可愛い笑顔があるんだろうかと思ってしまうあたりベタ惚れもいいところで。
小さな手を布団の中で探って指を絡めると、彼女が俺の首元に顔を寄せてくる。

「キヨくんから私のシャンプーの匂いする」
「俺、Aの匂いめっちゃ好きなんだよね、落ち着く」
「ほんと？じゃあシャンプー変えるのやめとく」
「そうして」
「…そうします」

「俺さぁ」
「？」
「今なんかめっちゃ幸せだわ」
「実はね、私も」

彼女は俺の首元に唇を押し当ててくすくすと笑ってみせた。