不良とか関係ないからさ【東卍】

学校 ページ1

『ほら、来てるよ』





なんて、恒例になった決まり文句を右から左に聞き流す。



例え、不登校でもテストくらいはやる。
逆にきちんとやらないと気がすまないし、評価に響いちゃうから。




靴箱にはいつもの数枚の封筒。

と、上靴。




「あー、ごめんね、知らない女の子…」



テスト期間に合わせて入れるなんて、どうかと思うな、流石に。





こうしていつも通りの登校を終えて、私は教室に向かった。









教室は、制服の群れでいっぱいで私が足を踏み入れると急に口数が減る。



その代わりに私に向けられる視線は多くなる。





そして、少し時間を置いてからみんな口々にこう言う。




『ほら、来てるよ』



その理由は分かってる。
もう、三年目なんだから流石に分かる。







「すみません…！渡多先輩って来てますか？」




この格好のせいか異様に同性から好意を持たれるから。


いや別にそれ自体が嫌という訳でもないんだけど、そうじゃなくて恋愛感情を抱いてない相手と付き合うのが申し訳なくて。


それ以前に同じ女だし、きっと彼女は私を男子だと勘違いしているだろうから。



でも恋愛の形は自由でいいと思うんだよね。
年齢差とか性別とか国籍とかさ。
狭くない？視野が。
もっと色んなもの見た方が面白いよきっと。




「ほらお客さん来てるぞ」



なんて、クラスメイトに声をかけられ。


「うん、ありがとう」




その女の子がいる入り口に向かう。




「あの、先輩、のこと私…」


「ごめんね、私、女なんだ、」



頬を染めて、恥じらう女の子になるべく優しい声色でそう伝える。



と、ここまでが登校のルーティーン。

これに、クラスメイトの女子から「おめでとうこれで11回目だよ」と言われるまでがいつも通りなんだな…実は。





もちろん、回数はこういうことがある度に更新される。うん。



そろそろマンネリ化も進んできた。


もう少し面白いことがあったらいいな、なんて。



ほんとにこれが叶うとはこの時点では思いもしていなかったけど。

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