第50番 ページ50
黒のレ#を押す。今は聴きたくない和音。脳内に焼き付いている、ラ・カンパネラ。一番に聴かせる、なんてクサいこと言ったのに。出来なそう、やな。
「そうかな?一生なワケないよ!だってれんと彼女、すっげー仲良かったじゃん!
いつか仲直り出来るよ!れん、うるさいし図々しいし!悪いことした方が謝れば、許してくれる!」
わかりやすいくらいに、止まる手。思わずチビを見た。……何やねん、うるさいとか、図々しいとか。悪口やん。
『いつか仲直り出来るよ』、『悪いことした方が謝れば、許してくれる』。まさか、小学生に励まされるとは。そんな簡単に、上手くいかないこともわかってる。謝れば済む問題じゃないことも、全部わかってる。
ただ。またAと、前みたいに話せる日が来れば良いなって。
「……ありがとな」
俺は頭をポンポン、と撫でる。チビはにっこり笑うと、またパタパタと足音を響かせどこか行ってしまった。
来年の三月の発表会で弾きたい曲、A覚えてるかな。チラッとしか言ってないから、覚えてないかも。……きっと、また発表会には呼べないから。学校で弾くしか、ないかな。
自分勝手だけど。ピアノの音聞く度に、俺のこと思い出してほしい。忘れないでほしい。Aにとっては、俺なんて記憶から消したいくらいなんだろうけど。
忘れられたく、ない。ごめんな。
「……先生、あの。三月の発表会の曲なんすけど」
「ん?あ、もう決めてあるの?何なに?」
「……リストの、『愛の夢 第三番』」
「またロマンチックな選曲ね〜!わかった、愛の夢ね。今から練習すれば余裕かな」
先生は、サラサラとメモに書き留めていく。それからカレンダーに目をやり、嬉しそうに頷いたのだった。
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佐藤るか - ボロッボロに泣きながら読ませていただきました、← これからも楽しみながら読ませていただきます!! (2019年3月9日 19時) (レス) id: 7822559aab (このIDを非表示/違反報告)
れいら(プロフ) - 更新ありがとうございますm(_ _)m廉くんが元の廉くんの戻ってくれたらと願ってしまいます。主人公ちゃんも幸せになりますように。 (2019年2月19日 21時) (レス) id: 26de836531 (このIDを非表示/違反報告)
にかちぃ - 更新楽しみにしています。頑張って下さい (2019年2月19日 21時) (レス) id: bb044d85aa (このIDを非表示/違反報告)
れお。 - 廉くんと仲直りして欲しい…涙 廉くんSide読みたいです!! (2019年2月18日 18時) (レス) id: 80a6625e36 (このIDを非表示/違反報告)
のんこ(プロフ) - 主人公ちゃんと廉くんお互い言葉足らずでモヤモヤしてしまう。廉くんSideの気持ちも知りたくなってしまいます。続きが気になりすぎます! (2019年2月13日 11時) (レス) id: 0d216a52c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れなさん | 作成日時:2018年12月16日 18時