第46番 ページ46
お兄ちゃんはボキボキと指の骨を鳴らす。その様子を、ポカンと見ているだけの私。
お金、は?学校は?どんどん浮かぶ疑問。何から聞いて良いのか、わからない。
「大丈夫、俺が全部上手くやるから。
Aはついて来てくれるだけで良い。学校も変わらないとこにする」
「でも」
「大丈夫大丈夫!気にすんな」
そんなこと、言われても。お兄ちゃんは「よーし頑張るか!」なんて言いながら部屋を出て行ってしまった。どうしよう、何考えてるかわからない。
確かに出たいとは思ってた、けど。貯金なんてまだまだだし。とりあえず、明日また色々聞いてみよう。
ところが。
ー「最近どうなってる?」
夏休み前、短縮授業。呑気に家に帰れば──リビングでコーヒーをすする、父の姿。静かなところを見ると、お兄ちゃんはまだ帰って来てないみたいで。
完璧に、油断してた。
「何であんなベッタリくっついてる。気味が悪い」
「……バイト、行ってくる」
「今日は休みだろう!!」
刹那。お父さんの左手が、コーヒーカップを思い切り払った。フローリングに叩きつけられ、無残に割れる。まだ入っていたコーヒーが、黒く広がった。
急激に上がる心拍数。怖くて。怖いのに、脚が動かない。スカートを握りしめた拳が、ガタガタと震える。
「ご、め。ごめんなさ、ごめんなさ……」
途端に思い出す、深夜の和室での情事。悪くないのに、無意識に謝って。目が見れない。吐き気がする。お父さんは立ち上がり、私の腕を力任せに引っ張った。
「ゃ、やだ、やだ、おねが、離して」
「離れようなんて思うな。離れていこうなんて思うな。
もしヘタな真似してみろ」
連れて行かれたのは、忌々しいあの和室。溢れ出る涙。兄はまだ、帰って来ない。
──「お前さ、おかしいよ」「嫌いっつーか。気持ち悪い」
やだ。やだよ。
「優太のこと、どうなっても知らないからな?」
そもそも。このお父さんから離れることが、無理で。
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佐藤るか - ボロッボロに泣きながら読ませていただきました、← これからも楽しみながら読ませていただきます!! (2019年3月9日 19時) (レス) id: 7822559aab (このIDを非表示/違反報告)
れいら(プロフ) - 更新ありがとうございますm(_ _)m廉くんが元の廉くんの戻ってくれたらと願ってしまいます。主人公ちゃんも幸せになりますように。 (2019年2月19日 21時) (レス) id: 26de836531 (このIDを非表示/違反報告)
にかちぃ - 更新楽しみにしています。頑張って下さい (2019年2月19日 21時) (レス) id: bb044d85aa (このIDを非表示/違反報告)
れお。 - 廉くんと仲直りして欲しい…涙 廉くんSide読みたいです!! (2019年2月18日 18時) (レス) id: 80a6625e36 (このIDを非表示/違反報告)
のんこ(プロフ) - 主人公ちゃんと廉くんお互い言葉足らずでモヤモヤしてしまう。廉くんSideの気持ちも知りたくなってしまいます。続きが気になりすぎます! (2019年2月13日 11時) (レス) id: 0d216a52c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れなさん | 作成日時:2018年12月16日 18時