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はる side ▽
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京『いや別に、どっちでもいいけど、とりあえず運転手さんに迷惑だから降りなよ』
「あ、え、はい。」
小さくなっていくタクシーを見送りながら
どうしたものかと考えていると
京『うち来るならちょっとだけここから歩くけど、来ないなら別にそれでいい』
そう言いながらさっさと歩き始めてしまう京本さん
「え?」
よく分からないまま立ち尽くすことしか出来ないわたし
京『どうすんの?こっから歩いて帰るの?』
くるりと首だけこちらに向けて無表情のままそう聞かれる
ここがどこか全然分からないし…
とりあえず京本さんの背中を追いかけることにした
男の人の1歩はわたしより全然大きくて
ぼーっとしているとどんどん距離が開いてしまう
桜が咲く春とはいえ、夜はまだまだ寒い
着てきたカーディガンの袖を精一杯伸ばして
指先まで覆うようにしてみる
何となく視線を感じてぱっと顔を上げると
京『もう少しで着くけど、飲み物でも買ってく?』
と、コンビニの目の前で立ち止まってわたしを待っていた
「飲み物?」
京『寒そうだから』
わたしが必死に伸ばしているカーディガンの袖を指さしてそう言われる
「まぁ…寒くはありますね」
と言いきらないうちにコンビニに入っていく京本さん
この人は最後までわたしの話を聞いてくれた試しがないな…
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作者名:うさぎ | 作成日時:2022年9月22日 2時