30「自己犠牲とか下らない」 ページ30
「……信濃様」
「大将、俺が守るから」
信濃様はそう言って、不敵に微笑んだ。
私は、頷き返して薬研様を見る。
少し安堵したような表情に見えるのは、気のせい、だろうか。
「ふうん……。
……でも、信濃一人で、“ここにいる男士全員を”捌ききれるのかしらねえ」
審神者さんはそう言って、くすくすと楽しそうに笑った。
私は、信濃様と薬研様の向こう側……刀を構えた、目に光のない男士たちを見る。
全員……操られているのだろうか?
「信濃様、駄目です。
あなたが折れてしまう」
「……それでもいいよ。
それで大将が守れるなら」
信濃様は、振り向かずにそう言う。
わずかに震えた声で。
……あーあ、もう、考えるのも嫌になる。
きっとこのままだったら、私も信濃様も死んでしまうんだろうな。
……あーあ、めんどくさい。
「……あなたが折れてしまえば、私は、一人です」
薬研様が相手の手中にある今、私には信濃様しかいないんだ。
だから。
「今は撤退が有効な一手です。
逃げましょう」
「させないわよ、そんなこと」
……ああ、そっか。
そういえば、審神者さんが進行方向を塞いじゃってるんだ。
んー……まあ、なんとか抜けれ……ないか。
手間取ってる間に背中を一突き、とか嫌だよなあ。
「安心して、大将。
守りきるまで折れるつもりは無いから」
信濃様がそう言う。
……ああ、なんだか。
聞き分けのない子供を相手しているみたいだ。
ぶちっと頭の中で、何かが切れる。
「……っ、そういうことじゃあ無いんです!!」
初めて彼ら相手に大声を上げた。
皆、目を丸くしている。
「自己犠牲の精神とか心底下らない。
自分の命一つ守れないモノなんて、誰かを守れるはずがないんです。
“私が守れるなら折れても良い”?
何を言ってるんですか?
そんなことされてあなたが折れたら……っ」
ああ、どうしよう。
頭がぐらぐらして、めまいがする。
しゃくり上げそうになるのを堪えて、私は信濃様を見つめた。
「私は……惨めです。
あなたが、……大事なあなたが消えれば、私は」
そう言うと、信濃様は「……ごめん」と呟いた。
……思ってたより、私は彼らがいることで助けられていたからね。
大事にしたいからね。
「……勿論薬研様も。
同じように思っていますよ」
目から光が消えていく薬研様を見る。
……これで完全に、彼も敵だ。
さて、どうやって逃げるかね。
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硝子屋梛霧(プロフ) - 僕，理数っ☆さん» 閲覧ありがとうございます！右目が黄色、左目が青です。 (2019年3月13日 7時) (
レス) id: 2cd0d38961 (このIDを非表示/違反報告)
僕，理数っ☆ - オッドアイの色は何色ですか~？ (2019年3月13日 0時) (レス) id: d73fedcf27 (このIDを非表示/違反報告)
琥雪国永 - この審神者のっとられればいいのに 続きお願いするぜ (2018年11月30日 10時) (レス) id: 67d7645157 (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋梛霧(プロフ) - 伍目神さん» 個人的に、伍目神さんの意見に納得しましたので、訂正させていただきます。ご指摘ありがとうございました！ (2017年9月25日 18時) (レス) id: d7d1167bbc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋梛霧(プロフ) - 伍目神さん» 貴重なご意見ありがとうございます！なるほど、確かにそうですね……未プレイなもので、そういうことに疎く、申し訳ありません……!!私の中で神力と霊力は名前をつけて区別しているだけで、名称に関係は無いです……混乱させてしまい申し訳ありません。 (2017年9月25日 18時) (レス) id: d7d1167bbc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梛霧 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年8月17日 22時
