騎士王と業火の姫君弍ノ章 (ページ35)

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地下編⑥ ページ35

2人が″焔ビト″になるとクロウドは混乱に乗じて足早に会場を立ち去っていった。
アーサーが私を包む炎にも臆せず、手を握って必死に声をかけてくれていた。

アーサー「A！A！大丈夫だ！俺がいる！炎に飲み込まれるな！」

私を包んでいた炎がスルスルと2人の重なった手に集まり、そして手から2人の体内へと消えていく。

A「お母様…、お父様…？」

アーサーは唇をかみしめて俯きながら震える声で言う。

アーサー「鎮魂…しないと。2人はもう還らない。せめて安らかに…」

2人で周りを見渡すがもう生きている人の気配がしなかった。
みんな無事に逃げたか燃えてしまったのだろう。
人の肉の焼ける音が、臭いがする。

お母様とお父様は腕を組み、静かに立っていた。
アーサーは泣いている私の手を握ったまま、近くにあったナイフを持つ。

アーサー「これ以上の痛みを与える訳にはいかない。俺たちで楽にしてあげるんだ。祈りの言葉は言えるか？」

私はその言葉に促されるようにして祈りを紡ぐ。

A「…炎ハ魂ノ息吹…黒煙ハ魂ノ解放…灰ハ灰トシテ…其ノ魂ヨ…」

「「炎炎ノ炎ニ帰セ」」

私がお母様に向けた指から炎の弾が…アーサーがお父様に向けたナイフから青い炎が出る。
そして2人はサラサラと灰になっていく。

母「イ゛ィィギギギデデデェェ…」

少しだけお母様の手がこちらに伸ばされた気がした。
″生きて″、初めてお母様からそう言われたのが今だなんてとても皮肉だ。

「「ラートム」」

アーサーに縋りついて泣く私。
アーサーも私を抱きしめながら泣くのを堪えていた。
触れてないから感触なんて感じないはずなのに手から命を絶った感触が離れない。

それから特殊消防隊が到着して衰弱していた私たちはすぐに第6特殊消防医院に搬送された。
そして目が覚めた時には何故かアーサーのこと忘れていたし、アーサーの姿もなかった。

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A「そっか…アーサーが…」

クロウド「そ、そうだ！！アイツはお前の大事な両親を奪ったんだ！！憎いだろう！？こちら側に来て一緒に復讐するんだ！！」

この男は何を言ってるのだろう。
私から両親を奪ったのはアーサーじゃない、お前だ。
まだ騒いでるクロウドに私は静かに指を向ける。
もういい、黙れ。

A「さようなら」

パンッ

地獄に堕ちろ。