騎士王と業火の姫君弍ノ章 (ページ32)

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地下編③ ページ32

とにかく間合いに入らないことだけ気をつけて、私は距離を取りつつ炎の弾で攻撃する。
私はある一瞬だけを狙っていた。
兄様が命の狩り取る攻撃をするその一瞬、懐に入り込んで合気道の体術でカウンターを決めるのだ。
そしてその時がやってくる。

クロウド「A、本当にこちらに来るつもりはないのかい？来なければ君が死んでしまうとしても？」

A「何度言われても答えは変わりません。私はアーサーと共に生きます」

クロウド「そうか…。ならばせめて僕の手で逝かせてあげるよ。さようなら、僕の姫」

クロウドがこちらに踏み込んだその瞬間、私は懐に入り込み剣を持つ手首を返す。
落とした剣を遠くに蹴り飛ばして、背中に回り込み掴んだ手首を捻り上げる。

A「形勢逆転、ですね。このまま貴方を撃ち殺します。最後に何か言うことはありますか？」

せめてもの慈悲でクロウドに問う。
焦った声色で早口で話し出すクロウド。

クロウド「お、お、おまえに良い情報があるんだ！お前の記憶を解放してやる！お前と一緒にいたあの男！！どこかで見たことがあると思ったんだ！！それで気になって調べてみたらあいつ、あの日、城にいたんだ！！」

その言葉であの事件の日の失われた記憶を思い出す。

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あの日、私はパーティまでの時間潰しに気まぐれで庭を散歩していた。
すると鉄格子にしがみついてこちらに声をかけてくる同い年くらいの少年が見えた。
綺麗な金髪だなー。

アーサー「おい！お前が囚われの姫なのか！？」

何を言ってるんだろう、この子。
首を傾げながら少年に近付く。

A「私の家だから囚われてる訳ではないと思うけど…。あなた、城に何か用事なの？門はあっちよ？」

アーサー「本物の姫なのか！！
俺は…一目城を見てみたくて…」

伏し目がちに答える少年。
少年のお腹がグーっと鳴る。

A「お腹空いてるの？んー…ちょっと待ってて！」

私は衛兵に声をかけるとさっきの少年を私の友人として城に入れてくれるように頼む。
衛兵は渋っていたが適当な貴族の名前を出して、パーティに来てくれたそのご子息よ？と脅すと入れてくれた。
衛兵の目から逃れるようにキラキラ目を輝かせながら周りを見渡す少年の手を引いて城内に戻る。
幸い今日はパーティの準備でバタついているから誰もこちらを気にしていない。
とりあえず私の部屋に入って戸棚から茶菓子を用意すると少年に向き合う。