蒼穹を探して 38 ページ8
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「そうだね。確かに昔の私はそうだった。けれど違うんだ。A。聞いて欲しい」
穏やかに、彼が話す。私の記憶にある夏油だ。ゆっくりと、その人の耳に届くようにと優しく語りかける彼の話し方は、聞き取りやすくて、なにより耳心地が良かった。
好きだった。
彼の話し方が、人への配慮が、優しさが。
心に染み渡るような温もりが、じわりと滲むように広がる。
好きだけど、それは、恋愛とかそういうのじゃ、ない。きっと違う。
それでも、歪な関係になってしまっても、会えなくても、話せなくても。
夏油を信頼出来る仲間だと、慕っていたのは変わらなかった。
「まずどこから話せばいいか。いや、別に分かってくれなくてもいいんだ。でも硝子にそう言ったら、どうせ誰もわかってくれないってくさるのも十分子供だと言われてしまってね……。ああそうそう、さっき硝子に会ったんだ。あと、悟にも。
アイツのあんなに必死な形相初めて見たなあ」
しみじみと語る夏油を見る。
姿形は、私の知っている夏油なのに。何がこうも違うんだろう。何が、夏油をここまで変えてしまったのか。
戻れないことを痛感するには遅すぎるのだろうか。
1歩、後退しようとして、空を仰ぐように見ていた夏油がふいにこちらに目をやる。
パチリと目が合えば、夏油はまた笑った。
歪で、沼のように深くて底がしれない。
ゾッとするほど歪んだ微笑みに見えた。
「……ふふ。Aのそんな表情も、私初めて見たよ」
気が付けば夏油に距離を詰められていた。足が張り付いたように動けない。ふっと短く息を吐く私を面白そうに、楽しそうに、……愛おしそうに眺めた夏油が手を伸ばした。
ひたりと両頬に優しく手が添えられる。
ふと、頬に爪がめり込むほどにギリギリと力を込められた。そう、錯覚した。
違う。それは記憶だ。いつかの記憶。
今はこんなにも優しく包み込むように触れてくれている。なのに。
「や、だ！！」
恐怖からくる拒絶反応は素直に、顕著にあらわれる。
パシンと音が鳴るくらい強く手を払い除け、夏油から距離を置こうとすれば、グイッと腰に手が回され引き寄せられた。
「ひどいなあ、A」
「ちがっ」
何も違くなどないのに、そう口が動く。
言い訳じみた言葉が口をついてでた。
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えりんぎのバター炒め(プロフ) - ゆうさん» 続きあります！亀さながらのゆっくり更新ではありますが、今後もお付き合いいただけたら幸いです🤗 (4月13日 17時) (
レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 続きってないんですか？待ってます (3月20日 22時) (レス) @page12 id: f37b355590 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ | 作成日時：2024年1月28日 17時
