蒼穹を探して 33 ページ3
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五条はフラフラとした足取りで寮へ帰る私の様子を見かねて部屋まで着いてきたらしい。少し顔を出すだけ……だなんて考えていたというのに開きっぱなしの部屋の扉に、苦しそうな声が聞こえて彼は飛んできてくれた、らしい。
聞いてる限りはそんな感じだった。
バカにしたような物言いから垣間見える優しさに胸が痛む。
本当に迷惑をかけた。
この歳にもなってこんなふうに同級生に迷惑をかけるなんて、なんて恥さらし。
「ごめん」
まだ掠れた声でそう伝える。
深く空気を吸いこめば、けほ、と乾いた咳が出た。そんな私を五条が眉を下げて見つめる。相も変わらずサングラスは真っ黒で、彼がどんな表情をしているのかは読めにくい。
でも多分これは、心配してくれている。たぶん。
ふと、頬にひやりとした、でも温もりのある体温が触れる。五条が躊躇いがちに手を伸ばして、そのままするりと私の頬に滑らせる。
「まだ顔色、悪い」
吐けるだけ吐いて幾分かマシにはなったが、きっと私は酷い顔をしているだろう。
擦り寄るようにその手に頬を預ける。
「はいばらが」
安置室。血濡れのシーツ。不自然な凹凸の付き方。
ああなんだって、こんなに鮮明に思い出せる。
唇が震え、短い吐息が落ちる。
また呼吸が浅くなりそうになったのを察した五条が、トントンと優しく私の背中を叩いた。
「分かってる。ごめん」
何も言わなくていい。そう静かに、私を安堵させる心地よい子守唄のように彼が囁き告げる。
森の静けさのような、遠回しな優しさにまた心臓が痛くなる。五条の不器用な優しさが浸透して、安堵を促して、ぽとりと私の悲しみを搾り取る。
次から次へと零れる涙に気づいたのは、五条がそれを優しく拭ってくれた時だった。
痛い。痛いほど染みる優しさが。
心臓がぎゅうぎゅうと音を立てる。
人は優しさで死ねるんじゃないかと、そう思った。
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えりんぎのバター炒め(プロフ) - ゆうさん» 続きあります！亀さながらのゆっくり更新ではありますが、今後もお付き合いいただけたら幸いです🤗 (4月13日 17時) (
レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 続きってないんですか？待ってます (3月20日 22時) (レス) @page12 id: f37b355590 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ | 作成日時：2024年1月28日 17時
