記憶の断片 ページ12
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何かを言おうと息を吸い、でも開いた口から音が漏れることはない。ない、ないから、もういいのかもしれない。
そうやって、五条にそう伝えようとして、
目尻が不意に熱くなった。発火したような熱さを覚えて、反射で目元に手を当てる。心臓が締め付けられるような痛み。狼狽えなかったのは、それが私が幾度となく経験してきたものだったからだ。
瞬きをすれば、それはいとも簡単に重力にさからえずに落ちていく。ボロボロと零れ出した涙と、ぎゅうぎゅうと心が締め付けられるような痛みに、それが喉からせり上ってくる。
「死なないで」
喉からせり上って、音にして初めて、私の本当にいいたかった事を理解する。
死んで欲しくない。
行かないで。
本当に辛い時と悲しい時、人間は体の中に心があることを痛感する。文字通り、痛感。心臓とはまた違った、情を感じる心の存在が確かにあって、そこが絞られるように痛むのだ。
縋り付きたかった。ずっと行かないで欲しかった。
なんで私たちと一緒に大人になってくれなかったんだろう。なんで私たちと一緒の正義を持ってくれなかったんだろう。
「ばか、ばか、きらい、げとうなんか、きらい」
私たちを置いていった夏油なんて、大嫌い。
自分の嗚咽が脳内に響き、鈍い頭痛を促す。最悪だ。
言葉なんてあったもんじゃない。死ぬ前に同期だった女の泣き顔なんて、夏油だってごめんだろう。
涙でぼやけて前が見えない。それでも、ぼやけた夏油の輪郭をなぞるように、必死に目を向ける。
ふと、背中に手が回った。驚いてパチリと目を瞬かせれば、溜まっていた涙が零れて視界がクリアになる。
随分近くに夏油の顔がある事が分かった。
「ごめん、A」
唇があつい。
「愛していたよ」
存在したはずの記憶を辿る。
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えりんぎのバター炒め(プロフ) - ゆうさん» 続きあります！亀さながらのゆっくり更新ではありますが、今後もお付き合いいただけたら幸いです🤗 (4月13日 17時) (
レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 続きってないんですか？待ってます (3月20日 22時) (レス) @page12 id: f37b355590 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ | 作成日時：2024年1月28日 17時
