記憶の断片 ページ11
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「遅かったじゃないか、悟」
失った片腕をかばいながら、彼が皮肉げに言葉を紡いだ。そうして、こちらへ視線を向けて、交差した瞳に一瞬戸惑いが見える。
私がいるとは、思っていなかったのかもしれない。
切れ長の細い糸目を見開いて。でも何事も無かったかのように私の1歩前に立つ五条へと視線を向けた。
これから五条が夏油を殺すこと。それが避けようのないことだということ。分かっていても膝が震えそうになる。それを嫌だと突っぱねて、何もかもから逃げてしまいたいのはきっと五条自身のはずだ。
かつての親友を、いや、今もなを親友だという彼を手にかけることを、五条が望むはずがない。
それでも、夏油が許しては行けない罪を犯してしまっていることだけが事実だ。
最後に言い残すことはあるか、と告げた五条に、夏油が淡々と自分の意思をこぼす。
この世界では心の底から笑えなかったという彼の言葉は、紛れもなく真実かもしれない。それでも、五条と過ごしたあの日々をそんな風に、『心の底から笑えなかった日々』で片付けてしまうのは、なんだか勿体ない気がした。
あんなに楽しかった頃でさえ、彼の中では非術師への怒りを募らせるタイムリミットに過ぎなかったのかもしれない。
「A、なんか言いたいことあるから来たんでしょ」
ふと振り返った五条にそう声をかけられて曖昧に頷く。顔を合わせるのは最期になるかもしれないから。
ふたりの間に割り込まないようにいた場所から数歩進みでる。夏油はそんな私を見て、どんな表情をしたらいいか分からないように、口を引き結ぶ。
何を言いたかったのか。
こうやって何年も会っていない夏油を前にして、はたとそう思う。
夏油がいなくなってから、後悔ばっかりだ。あの時、こうすれば。もう少し話を聞いていれば。夏油の様子に、気付いていたら。
消えない後悔は、言えなかった言葉ばかりを心に産み落として、それでももう使い道もない意味の無い言葉だと蓋をする。
彼が離反する前なら、きっと言えることは沢山あったはずだ。私が今、夏油に言いたいことってなんだろう。
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えりんぎのバター炒め(プロフ) - ゆうさん» 続きあります！亀さながらのゆっくり更新ではありますが、今後もお付き合いいただけたら幸いです🤗 (4月13日 17時) (
レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 続きってないんですか？待ってます (3月20日 22時) (レス) @page12 id: f37b355590 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ | 作成日時：2024年1月28日 17時
