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Sleep.13 ページ13

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「進路希望調査ぁ?」

高専4年目の初夏。
4年制の呪術高専最後の、夏と言うにはまだ雨の匂いと肌寒さが残る日だった。

朝、夜蛾先生が教室に入ってきて早々に配られたプリントには、上に控えめに、でも確かな存在感を放つ『進路希望調査』の文字があった。

「ここでもこんなもん書くんだな」

五条がプリントを人差し指でつまみ、ヒラヒラと持ち上げては物珍しそうに眺める。そんな五条に夏油が「それはそうだろう。一応ここも__」などと話し始める。硝子は興味なさげにプリントに視線を落としては机の下でタバコを弄んでいた。

私も第一希望、第二希望と並んだ文字を見つめる。階級は3級から一向に上がらない。伸び代もない。五条や夏油ならデコピンで祓えそうな呪霊相手に怪我ばっかりして帰ってくる。
私は、呪術師を続ける意味なんてあるんだろうか。
私がいても、何の役にも立たない。

持っていたプリントに僅かに力が入る。くしゃりと歪んだプリントを見てまた訳もなく悲しくなった。脆い。







「就職?」


たまたまだった。

低級呪霊の任務が終わり、誰もいない教室の席に腰掛けて今朝貰った進路希望調査を取り出す。本当にこれでいいのか。第一希望の欄に書かれた文字はいかにも頼りなくて弱そうだ。


何度も消しゴムをかけた跡が残って、少し黒くくすんだ欄に上からより濃い黒でそれは書かれている。


プリントを眺めてはため息をついて、それを五条に見られたのは、本当にたまたまだった。

後ろから聞こえてきた声に、ビクリと方が震え、プリントを見られないようにぐしゃりと握りしめ振り返る。見られないようにもなにも、見られたから読み上げられたのだというのに。

背後には、いつ帰ってきたのか、眉根を寄せてたたずむ五条がいた。

何か言いたげに引き結ばれた唇からは、今にでも罵倒と文句がこぼれ落ちそうだ。しかし、私の思い過ごしか、五条がただ口にしなかっただけか、覚悟した言葉は一向に来ない。

重い沈黙が流れ、その沈黙自体に私は動揺が隠せなかった。


お前ザコだし、それがいいんじゃない?お似合いだろ。とか、呪術師やってても何も意味ないだろうし、お前にしては賢い判断だな。だとか。

そんな言葉が降ってくると思っていたのに。呆気にとられて、いやでも五条の事だから今からでも、とまた身構える。

それでも、本当にそんな様子は無いようで、恐る恐る私も力を抜いた。
ゆっくりと、それを一言一句なぞって確かめるように五条が口を開く。

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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟   
作品ジャンル:恋愛
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もなか - 初コメント失礼いたします!五条がかっこよすぎるし、はぁ・・・私のところにも夜来てほしい。(絶対いい夢見れる) (12月14日 16時) (レス) @page13 id: bed5cc04c4 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - にぃ!さん» †┏┛墓┗┓† (8月12日 21時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
にぃ! - 神作!グハッ、誰か墓頂戴、 (8月7日 21時) (レス) @page7 id: 71597d68ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年8月4日 19時

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