Sleep.2 ページ2
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「今日もすごいクマっすね」
車に乗ってきた1年生の1人、虎杖くんが世間話程度に振ってきた話題に最初に反応したのはその横に座っていた釘崎さんだった。
「ちょ、アンタ!レディーになんて事いうのよ!失礼でしょ!?」
「あはは、いいよいいよ」
グーで虎杖くんの頭を殴る釘崎さんをどうどうと宥める。
殴られた虎杖くんはと言えば、「いってぇぇ!!」と叫んでからようやく釘崎さんの言っていることの意味に気が付き、「あ、すいません。俺、何も考えずに」と丁寧に謝罪してくる。
ちなみにだが、虎杖くんの言うクマとは、決して耳と毛の生えた森に生息しているあのクマさんではない。
私の目の下にある、習字してて間違って付いてしまったのかと疑うほどの真っ黒いクマである。
「Aさん、まだちゃんと寝れてないんですか?」
気を使ってか恵くんが、そう尋ねてきた。
乾いた笑みを浮かべる私に、釘崎さんが「まだ、とかちゃんと、ってどういうこと?」とさらに問いかけてくる。
「うーん、恵くんは知ってると思うんだけど、私不眠症なんだ」
「不眠症……」
反芻するように虎杖くんが呟いた。生きていればなんとなく知っている単語の羅列では無いかと思う。
釘崎さんが眉をひそめたのがミラー越しに見えた。
皆は任務だし話しながらでも大丈夫だろう。緩やかに車を発進させる。車体が揺れて、ハンドルの近くに置いてあった小物の人形がパタリと倒れた。
うーん次の赤信号で起こしてあげよう。
「え、不眠症って寝れないやつですよね……?大丈夫なんですか、そんな」
「大丈夫かって聞かれたらうーんまあ。昔からだし慣れたかな」
昔から!?と驚く二人の反応の新鮮さに笑ってしまった。確かに最初はしんどかったけど。慣れとは怖いものだ。
「ストレス性のですか……?病院いった方がいいんじゃ……」
「あはは、それが違くてね。私、昔ちょっと呪れててさ」
「呪わ……!?」
びっくり仰天目を剥く二人を横目に、十字路に出れば信号が赤だった。ブレーキを踏んで完全に止まったことを確認し、倒れていた小物を起き上がらせる。
その小さな頭を撫でるように触れて、また視線を3人に戻した。
「そんな大袈裟なものじゃないよ?
眠れなくしてじわじわ嬲り殺す系の呪霊を祓いに行った時に私がヘマして、軽く呪われちゃったわけ」
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もなか - 初コメント失礼いたします!五条がかっこよすぎるし、はぁ・・・私のところにも夜来てほしい。(絶対いい夢見れる) (12月14日 16時) (レス) @page13 id: bed5cc04c4 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - にぃ!さん» †┏┛墓┗┓† (8月12日 21時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
にぃ! - 神作!グハッ、誰か墓頂戴、 (8月7日 21時) (レス) @page7 id: 71597d68ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年8月4日 19時