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『私は……あの後傷ついたしたくさん泣いたよ。
話せなくなるなら、告白なんてしなければ良かった。ずっと友達のままでいればよかったって』
松田くんと過ごす日々がどれだけ楽しくて、幸せだったか。話せなくなる苦痛より、気持ちを抑えてずっと一緒にいれた方が、私には幸せだったんじゃないかって。
そんな堂々巡りをずっと考えていた。
きっと告白しないままでいたら、気持ちを抑えて友達でいるという別の苦しさをまた味わっていたというのに。
都合のいい事ばかりを考える。
それでも私は、松田くんにとって特別になりたかった。松田くんを好きだった気持ちに嘘偽りはないのだ。
何度時間を巻き戻せたらと考えたか分からない。心臓が痛くなるくらい、泣いて、辛い思いに歯を食いしばって。
最後の最後で松田くんのその先の言葉を怖がって、遮ったのは私だ。逃げたのは私。それでも、自分だけを責めるには、あの頃の私を無下にしすぎている。
「知らねぇよ……そんなの」
何かに耐えるように呟いた松田くんの声は、頼りなくて、悲しみを含んでいるようにすら感じた。
そうだ。松田くんからしてみたら今更何の話だって感じだろう。全部私のせいなのに、今更松田くんにあたって、バカみたいだ。
この話はもう終わりによう。
ごめん、とそう謝ろうと口を開けば、重ねるように松田くんが「少なくとも」と言葉を続けた。
「俺は、あのままでいたかったとは思わねぇ。お前と、ただの友達でいたかったとはな」
松田くんが青みがかったその瞳で私を真っ直ぐ見つめながら言うから、心臓が小さく跳ねる。僅かな甘みと懐かしさを含んだ、待ち望んでいたようにすら感じる鼓動だった。
ああ、そうだ。
こうやって真っ直ぐ私を見て話してくれる事や、自分の意見をハッキリ口に出す、松田くんのこういうところも好きだったんだ。
『……何か、ごめんね。こんな口喧嘩みたいなことするために同窓会に来たわけじゃないのに』
「ん。まあ俺はお前に会いに来たんだけどな」
『なん、え?』
そんな急にドキっとするような言葉を言われると心臓に悪い。俯いていた顔を上げれば、意地の悪い笑みを浮かべる松田くんの表情。
からかわれているのだと気付いてムッとしてしまう。
一瞬でもときめいた私がバカだった。
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✧︎ - 本当に好きすぎて一気読みしてしまいました…素敵な作品をありがとうございます!! (4月14日 1時) (レス) @page50 id: 28351a5556 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - あわさん» はわわわ神作?神作なんて言ってもらえるんですか……?すごく嬉しいです!私の文章力で松田陣平の素晴らしさを伝えきれているのか分かりませんが……笑 更新頑張らせていただきます💪 (2023年4月16日 18時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 素晴らしい…神作すぎる…更新待ってます! (2023年4月16日 8時) (レス) id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - ???さん» ひぇぇ好きだなんて言って貰えるなんて……ありがたいです!続き書きます!そちらこそ体調に気をつけてくださいね(*´﹀`*) (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - アリアさん» 本当ですか!?そう言ってもらえるなら喜んで続きを書かせていただきます(^ - ^ )コメントありがとうございます! (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年2月22日 17時