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同じ気持ちだったなら。
私から告白したのだ。私の気持ちが分かっているなら、両想いな事も当然分かっているはずじゃないか。
言ってくれたら、あんなに辛い思いする必要なかった。
こんなふうにフラれたと思い込んでその思い出を引きずる事だってなかった。私が何年松田くんへの想いを____
『だ、だってそんなん言ったって私だって必死だったんだし。言ってくれないとわかんないよ』
「はあ?」
あ、これ。絶対面倒臭い女だと思われる。
欲張った。同じ気持ちだったと知った今、後悔や松田くんを責める気持ちがブクブクと湧いては弾ける。
松田くんのせいじゃない。私が悪い。そう思うのに止められなかった。
『だいたい!私があの一件でどれだけ気に病んだと思うの?もうめちゃくちゃ落ち込んだんだからね!?』
「んなこと言われたって、俺だって好きな奴に告白されて浮かれた直後にあんなん言われて、黙るしかねぇだろ!」
好きな奴、という単語に一瞬怯んでしまう。
松田くんが私の事をそんなふうに言ってくれる事が今更嬉しいなんて。
その恥ずかしさと嬉しさを隠すように、また言わなくてもいい言葉が口をついてでる。
『私だって、あの頃はめちゃくちゃ好きだったから変に嫌われたくなくてあんな事言っちゃったんだよ!』
「っ……んな事で嫌わねぇつーの!」
今度は私の発した言葉に松田くんが一瞬固まった気がしたが、多分気のせいだろう。だって松田くんは今も昔も、余裕がある。
誰かの言葉に惑わされたり、戸惑ったり、そんなの無いに違いない。そうでないと、私はあの日、松田くんをどれほど傷つけてしまったと言うのだろうか。
「そもそもお前だってズルイだろ。あんな言い逃げ。こっちがどれだけ我慢したと思って」
『……我慢ってなに。あれから卒業までろくに話しかけて来なかったクセに』
「あー!クッソ!
それはお前があんな事言うから!あんなんもう、俺の事は別にいいって言ってるようなもんだろ!」
確かに私のあの言葉は、そう捉えられてもいいようなものだった。
松田くんは当時あの言葉を、私はもう次に進みたい。松田くんを忘れてスッキリしたい。と言ったような告白に捉えたんだろう。
それに、きっと松田くんは私に話しかけようとしてくれていた。それに答えずに露骨に無視して、避けていたのはきっと私の方だ。
「確かにそうだけど」
何だかムカついたから松田くんのお皿に乗っていたお肉を強奪した。おい、とか聞こえません。
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✧︎ - 本当に好きすぎて一気読みしてしまいました…素敵な作品をありがとうございます!! (4月14日 1時) (レス) @page50 id: 28351a5556 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - あわさん» はわわわ神作?神作なんて言ってもらえるんですか……?すごく嬉しいです!私の文章力で松田陣平の素晴らしさを伝えきれているのか分かりませんが……笑 更新頑張らせていただきます💪 (2023年4月16日 18時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 素晴らしい…神作すぎる…更新待ってます! (2023年4月16日 8時) (レス) id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - ???さん» ひぇぇ好きだなんて言って貰えるなんて……ありがたいです!続き書きます!そちらこそ体調に気をつけてくださいね(*´﹀`*) (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - アリアさん» 本当ですか!?そう言ってもらえるなら喜んで続きを書かせていただきます(^ - ^ )コメントありがとうございます! (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年2月22日 17時