高校時代にフラれた相手と同窓会で再会した【松田陣平】

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どれくらいその温もりに縋っていたか。

頃合かと私がゆっくり背中に回していた手を緩めれば、離さないと言わんばかりに松田くんの力が強くなって。しかしそれも一瞬の事で、ゆっくりと松田くんも抱きしめる手を離す。

安堵のせいでくたりと力が抜けた体はやけに重たくて、今夜はよく眠れそうだななんてぼんやり思った。

ぱちりと松田くんと目が合う。

その顔がいやに真剣そうで、カッコよくて、思わず言葉につまる。


「A＿＿＿＿＿」

「ちょっと松田くん！勝手な事されると困るんだけど！」


松田くんが何かを言おうと口を開きかけたのとその大きな声が響いたのはほぼ同時だった。
驚いて視線を向けた先にいたのは、腰に手を当て仁王立ちしたショートカットの綺麗な女性だった。

怒鳴るように声を張り上げた彼女は、私と松田くんを見て、キョトンとした表情になる。少しつり目ガチな瞳がパチパチと瞬きを繰り返す。

「被害者の女性……？」

「ああ、人質にとられてた。高校の同級生だったんだよ」

女性は驚いたように目を見開いて、しかしすぐに私に「大丈夫ですか？」と駆け寄ってきてくれる。

『はい、松田くんが助けてくれて』

「そう……良かったわ」

安堵を含んだ瞳が柔らかく細まる。顔も知らない人なのに。私なんてあなたにとっては赤の他人だというのに。何で人の事でこんなに優しい表情ができるのだろう。


「それにしても……」

すくっと立ち上がった彼女は眉を吊り上げて松田くんを睨む。


「爆発物処理班も突入準備完了してたのにひとりで飛び出して行って！勝手な事されると私の責任になるんだけど！」

「あーあーそれはゴメンナサイ」

「今後はこんなに事ないようにね」


「へいへい」と全然反省していなさそうな返事をしながら松田くんはさっさとどこかへ行ってしまった。しかし、私は彼女の言葉に違和感を覚える。


『松田くんって爆発物処理班じゃないの……？』


首を傾げる私の呟きを拾った彼女が「ええ」とこたえる。


「彼、私と同じ捜査一課なの。
何だか同期の萩原くんが爆発に巻き込まれたことがあったらしくて。その犯人を捕まえにこっちに来たの」

『そうなんですね……』


てっきり爆発物処理班だと思っていたから少し驚いた。
きっと色々あったんだろうな。


「じゃあ、少しだけ話聞かせてもらってもいい？」


取り調べのようなものだろうか。
ずっと座り込んでいた私に手を貸して立たせてくれた彼女に『はい』と頷いた。

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