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「で、彼氏いねぇってどぉ言う事だ?」
『ひぇ、言葉通りの意味ですん……』
ただいま、松田くんに尋問をされてまする。
サングラスの奥からの圧がすごい。この状況にピッタリなことわざがなかっただろうか。そう、アレだ。蛇に睨まれた蛙とかいうやつ。
助けを求めれば、友人たちは時折、仲良いねえと母性をたたえた瞳で私を見てくる。無慈悲。見放されているのかそれは。
2人は尋問されている私などに見向きもせず萩原くんとええと……上田くん?と話している。
おうおう、楽しそうでなによりだよ。私も混ぜて欲しい。
恨めしく楽しそうにする4人を見ていれば、どこ見てんだよ、と顔面を掴まれ、強制的に松田くんの方を向かされた。痛い!くび!くびおれる!
『普通乙女の顔面掴むかな!?』
「お前は俺だけ見てればいいんだよ」
『突然の少女漫画ゼリフ』
普通こういうセリフは漫画だからこそときめくもので、現実で言われるとドン引きなのだが、何故か松田くんが言うと様になっている。
これがただしイケメンに限るってやつか。
はん、と鼻で笑って一蹴したいところだが、少女漫画育ちの私にはクリティカルヒットだった。
途端に店内が暑く感じるほどに顔に熱が集まる。
「はは、顔真っ赤」
『イケメンきらぃだあ』
両手で顔を覆って俯く。そろりと手をおろせば、おかしそうに笑う松田くんが見えた。
甘酸っぱい擬音が聞こえてきそうなくらい、大きく心臓が跳ねる。
ときめくな私。松田くんの事はもう好きじゃないんだから!
『……松田くんこそ、彼女いないらしいじゃん?』
試すようにそう言えば、「あーあの時はいたんだよあの時は」と、しつこいものを追い払うように言われた。何だそれ。適当か。
『そんなん言ったら私もそうかもじゃん』
「お前はねぇ」
『ひどくない!?』
この天パサングラス煽りよる。私はモテないとでも言いたいのだろうか。確かにモテたためしは1度もないけど。
ふつふつと湧く怒りに耐えるのに必死な私には、松田くんの「Aに彼氏なんざいたらこっちが困るんだっつーの」なんて呟きは聞こえるはずがなかった。
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✧︎ - 本当に好きすぎて一気読みしてしまいました…素敵な作品をありがとうございます!! (4月14日 1時) (レス) @page50 id: 28351a5556 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - あわさん» はわわわ神作?神作なんて言ってもらえるんですか……?すごく嬉しいです!私の文章力で松田陣平の素晴らしさを伝えきれているのか分かりませんが……笑 更新頑張らせていただきます💪 (2023年4月16日 18時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 素晴らしい…神作すぎる…更新待ってます! (2023年4月16日 8時) (レス) id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - ???さん» ひぇぇ好きだなんて言って貰えるなんて……ありがたいです!続き書きます!そちらこそ体調に気をつけてくださいね(*´﹀`*) (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - アリアさん» 本当ですか!?そう言ってもらえるなら喜んで続きを書かせていただきます(^ - ^ )コメントありがとうございます! (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年2月22日 17時