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「…だりぃ」
8:07。通勤・通学ラッシュのこの時間に、大勢の人にもみくちゃにされながら呟いた。
なんでチャリ通の俺が、こんな満員電車に乗っているかというと…。
痴漢や盗撮防止のための監視をしているからだ。
別に、俺だって、そのことに対して不満を持っている訳じゃない。ねみぃけど。
性犯罪は未然に防がなければならないし、犯人を捕まえてやりたい。だりぃけど。
そうじゃなくて、俺が不満を抱いているのは、俺が抜擢された理由だ。
『大野なら、私服警官に見えないし、犯人にもバレにくい。こんなにやる気の無さそうな警官はいないからな』
…だってよ。
金髪なことは百歩譲ってしょうがないとして、やる気が無さそうって！
顔はずっとこの仕様だっつーの！
「…はぁ…、だりぃ…」
8:10。ふと、開いた右側のドアを見ると、見慣れた金髪の可愛い顔が入ってきた。
「翔ー……って、だめだだめだ、集中しねぇと…」
翔に話しかけたい…そしたら、こんな満員電車も悪くないって思えるのに…。
前に、同僚のニノに、翔のこと考えると心臓の辺りが縮むって相談したら、「それは恋ですよ、大野さん」って言われた。
正直実感なんか無かったけど、恋だって考えると、胸にストンと落ちてきた。
しょーう、こっち向けー、恋って何なんだ、俺はお前に恋してんのかー。
念じつつ翔を見つめていると、翔の肩が跳ねた。
バレたかと思ったけど、どうやらそうではないらしい。
だって、翔と少しも目が合わないし、アイツは何だか怯えた様に後ろを振り返っていた。
…ん？怯えた様に…？
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作者名：salt_* | 作成日時：2017年8月29日 20時
