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陽咲の里の、花咲く森の中。
一人の少年が瞳を伏せ、中心に立っていた。
「…聞かせて…」
少年はそう呟くと、ゆっくりと瞳を開いた。
その瞳は、燃えるような赤色。
ざわざわざわ。
その言葉に応えるように風が吹き、葉が擦れる音が響く。
『ーー…』
ふわりと笑った少年の頬を、風が優しく撫でた。
「ありがとう」
また、木々がざわめく。
「…サトシさん？」
少年がふと空を見上げるとー…。
落ちてくる、影。
「ショウくん、あんまり力を使いすぎると疲れるぞ」
「わざわざ迎えに来てくれたんですか？」
「心配だからね」
「すみません…ありがとうございます」
「…なぁ、ショウくん。焦らなくていいんだぞ？」
「…僕、早く皆さんのようになりたいんです」
「俺たちの？」
「はい。だって僕、足手まといだから…。早く、役に立てるようになりたいんです。」
「…バカだなぁ」
「…へ？」
「強くなろうとするのはいいことだけど、それでぶっ倒れてたら意味ないだろ？」
「…」
「それに…ショウくんはまだ子どもなんだから、俺たちに…俺に、甘えてよ」
「サトシさん…」
「ほら、ショウくん、帰るよ」
「…はい！」
「あ！リーダーとショウちゃん！やっと戻ってきた！」
「おかえり」
「ごめんごめん…って、どうした、カズ。そんなむくれて」
「カズがね、俺のプリン食べたから、買いに連れてってやって！」
「…ぷりん…？」
「あ、ショウくん食べたことないんだっけ？」
「じゃあ、ショウちゃんの分も買ってきてよ！」
「いっそ、皆の分買ってきて」
「嫌ですよ、ショウちゃんならまだしも」
「…僕、皆で食べたいな…？」
「ほらー！」
「…ったく、しょうがないなー…」
このあと、プリンを初めて食べたショウが、大好きになるのは、また別の話。
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作者名：salt_* | 作成日時：2017年8月29日 20時
