ひとつ屋根の下 Part8

・ ページ43

.



海人) ねぇ、しめはずっとここにいるの？


しめ) どういうこと？


海人) どっかさ、行きたいところないの？


しめ) 死ぬまでに行きたいところ？


海人) まぁ.....そうだけど、


しめ) 特にないかなぁ、


海人) なんか考えといてよ、俺ついてくから


しめ) 海人が旅行行きたいだけじゃん



死ぬまでに行きたいところ。海人に言われて考えてみるけど思いつかない。高校生の時に病気になってから、夢とかそういうのは考えなくなった。いつか来る最後の日を待つことだけが俺の人生だと思っていた。



しめ) 海人は大学卒業したら何になるの？


海人) え？それは内緒だよ


しめ) なんでよ、秘密にする必要あるの？


海人) だから卒業するまで生きててね、


しめ) それはどうかな、


海人) とにかく、絶対死ぬなよ



無理だよ、その言葉だけはなぜか口に出せなかった。もしかしたら弱い俺がその言葉を発せなくしてるのかもしれない。もう、そんな気持ちとはとうの昔に別れを告げたつもりだったけど。



しめ) わかった、考えとくわ



結局口から出たのはそんなしょうもない言葉だった。考えとくって、そんなの考えても未来は変わらないのに。



海人) あっ、それと行きたいとこも考えといて


しめ) うん、わかったぁ


海人) なんだよ、面倒くさそうにすんなよ


しめ) 別に、めんどくさくないよー



帰り際にそんなことを言った海人。行きたいところなんてわかんないよ。考えてしまったら、まだ生きたいって思ってしまうから。夢とか目標とか、考えるから辛くなるんだって痛いほど経験したはずなのに。



.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す