ひとつ屋根の下 Part10

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痙攣が治まったのは5分が経過した頃だった。その5分は俺には1時間くらいに感じた。



しめ) 海斗苦しいね、兄ちゃんここにいるからね



大きく胸を上下させて息をする海斗。目からポロポロとこぼれ落ちる涙を見て俺の方まで苦しくなる。俺がもっとちゃんとしていれば、海斗を少しでも楽にしてあげられたかもしれないのに。



しめ) 怖かったよね、もう大丈夫だからね



せめて俺の気持ちが伝わればと冷えきった手を握る。マッサージするように優しく触れれば少しだけ表情は和らいだ気がした。



宮近) .......んっ......にぃ....ﾊｧｯ.....ﾊｧｯ....


しめ) どうしたの？おしゃべりするの？


宮近) ....にぃ.....ちゃ......ﾊｧｯ....


しめ) もしかして、俺の事呼んでくれてるの？



大きく2回瞬きをして俺の顔をじっと見つめてくる。驚きと嬉しさで動けないでいる俺は、弟の前で泣いているのだろう。



しめ) 海斗、兄ちゃんのこと呼んでくれたね、



嬉しくて思わず海斗の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。それでも優しい笑顔でいてくれる弟に今日はどこか励まされる気がした。



てんかん発作で疲れてしまったのか直ぐに眠ってしまった海斗。その寝顔を見ながらふと昔のアルバムを開く。



しめ) なんか、病院ばっかりだなぁ



アルバムの写真は病院の中庭とか、病室とか、海斗は生まれてからしばらく入院していて、退院してもほとんどを家か施設で過ごしている。



両親がいなくなって、1番辛かったのは間違いなく海斗だ。海斗が生きる小さな小さな世界にはほんの僅かな登場人物しかいない。俺と違って自由に外を出れない海斗は、最も近い存在を突然失ったわけだから。



しめ) 寂しいよね、それに、怖いよね....



海斗がリハビリをすごく頑張りだしたのだって、無理してまで言葉を話そうとするのだって、きっとひとりで生きていくことへの不安からなるものだ。



俺がもっとそばで、ずっと隣にいるよと伝えられたらいいけど。頼りないし情けない兄では海斗も安心できないはずだ。



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