ひとつ屋根の下 Part10

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しめside



後部座席に乗る海斗はご機嫌なのか、一生懸命おしゃべりしている。まだ言いたいことは伝わらないけど声の明るさとか、テンポ感とか、そんなので感情が伝わってくる。



しめ) すごいねーおしゃべり、上手だね！


宮近) ......んっ！


しめ) 今日楽しかった？俺は仕事疲れたよー



帰りの車はいつもこんな感じ。その日にあったことを俺に教えてくれてるみたいだ。家に帰って海斗をベットに移して少しずつ家事を進める。



しめ) 今日は何味がいいかなぁ



海斗の栄養の源となってる経腸栄養剤には色んな味があって、実際に感じることは出来ないけど毎日海斗の好きそうな味を選んであげるのが俺の楽しみでもある。



しめ) 今日はチョコ味、甘くておいしいよー



いつもはそう声をかけると大きく2回瞬きをしてくれるけど、今日はどこか一点を見つめて動かない。疲れちゃったのかなと不安になった。



しめ) かいとー、どこ見てるの？



その目線の先を辿っているとギシギシとベットのきしむ音がする。急いで振り返るとさっきまで固まっていた海斗の体はガタガタと震え始めた。



見覚えのある光景と、苦しそうな弟の表情。いつもだったら慌てて動き出す両親を見つめていたけど今は俺だけ。



しめ) どうしよう.....えっと.....



焦っちゃダメだと分かっていても、自分の心臓がドキドキと動いているのが分かる。携帯を開いて時間を測る。携帯を操作する自分の手が震えていることに驚いた。



しめ) かいと....大丈夫...大丈夫だからね、



見ていることしかできない自分が情けなくて、まるでお守りのように握っていた携帯をさらに強く握りしめる。泣きたくないのに、泣いてしまう俺は弱虫だ。


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