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子供は悪い大人に憧れるもので ページ25




「全く…アンタもよくあの馬鹿な男に着いていくね。」

心底呆れたとばかりの口調で、そう零す老医はテキパキと怪我の処置をしていく。恐らく彼女に一番世話になってるのは自分だろう。自分でもよくあの人でなしに着いていくと思う。そう思いながら好きであの男の後ろをちょこまかと着いて行ってる訳だから、私も随分もの好きだ。

「国のお偉い連中は何を考えてんだか…」
「どこで誰が聞いてるか分かりませんよ。そういう事言うのは__」
「アンタみたいな子供や若いのが瀕死で帰ってきては、戦場へ再び送り出す為に手当てをしてやるあたしの身にもなりな。」

それを言われると返す言葉がない。黙って手当てを受けていれば、最後に湿布をペチン、と貼られた。道具を片付ける彼女をただぼんやりと見ていれば、「医者はね、」と口を開く。

「医者は、人を生かす為にいるんだよ。戦場へ送り出す為にいるんじゃない。完治しきっていない怪我人が戦場へと赴くのを、あたしがどんな気持ちで見送ってるかアンタに分かるかい?」

分かると答えても、分からないと答えても彼女が怒る未来しか見えない。だから曖昧な反応を返せば、ギロリと睨まれた。年季の入った鋭い視線は怖い。魔女みたいだ、というのは例の男が言っていたことである。鉄槌を食らってたので死んでも口にはしないと心に決めた。
「あのバカのどこがいいんだか」と呟いた老医に、はて、と首を傾げる。どこがいいんだろう。ろくでなしなあの男を師と仰ぎ、最近では背中を任せてくれる様になったのが堪らなく嬉しい。そのくせどこが良いのかと聞かれたら答えられない。全く変な話だ。

「恩人だからかい?」
「うーん、それは違うな。」

あの日、死にかけの自分を助けたのは彼だが、酒に女に借金に、とやってる事はクズなので、恩人フィルターでギリギリ保っていた好感度はマイナスを振り切った。クズでも恩人なので感謝はすれど、それはそれ、これはこれ。Aはここに来て割り切りを覚えた。

背脂たっぷりラーメンが食べたい→←絶望も美味しく戴く悪魔



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ラッシーはん(プロフ) - 待って返信きた!?すごく続きも楽しみですし書き方参考にさせて頂いてます!!対比しているってとこはアスタ=近距離主人公=遠距離みたいなもんですかね!間違ってたらゴミ出しに出されてきます。そして畑の肥やしに生まれ変わってきます。無理なさらず頑張ってください!! (6月6日 20時) (レス) id: 848084950d (このIDを非表示/違反報告)
Hana(プロフ) - ラッシーはんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!もう一人のアスタの話だと思って読んでいただけたらと思います。対比してる部分も作りたいなぁと思ってるので、楽しみにしていただけたら嬉しいです! (6月6日 15時) (レス) id: 906e49b810 (このIDを非表示/違反報告)
ラッシーはん(プロフ) - こんなに短く簡潔で面白くて凄いです!!めっちゃ応援してます!! (6月5日 2時) (レス) @page2 id: 722157c700 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Hana | 作成日時:2023年6月2日 22時

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