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ぶつかった人は、泣きそうになっている私を見てぎょっと驚き、わたわたと慌てている。
「え、すいませんそんなに痛かったですか、どこが痛いですか？」
違います、と言おうとしても涙が溢れ出てしまって、首を振ることしかできない。
違うの、どこも痛くないの
「ああぁ…！ほ、保健室に行きますか、乗ってください！貧弱で申し訳ないけど…！」
『…ちがう、ちがいます…』
「…ちがう？」
『傷つけたのは、わたしのほう…』
ぼろぼろと涙が溢れ出てしまって、止まらない。
目の前の人を混乱させてしまっているのはわかってる。
でも止まらなかった。
『…私…自分のことしか考えてなくて…自分だけが辛いと思ってて…っ』
「…うん」
『傷つきたくないからって、今度は純喜くんのこと傷つけちゃって…』
「…純喜…あぁ、」
『純喜くんから色んなもの奪っちゃったし…勝手に離れちゃったし、
もう会えない…っ』
自分でもなにを言ったか覚えてないくらい、
まとまってなくて、文もおかしかったかもしれないけど
目の前の人は何も言わずにずっと聞いてくれた。
すれ違うひとがじろじろとこちらを見るのがわかったけど、
私がそんなのも気にせず泣いていたら、その人は私の前に立って壁になってくれた。
「…その、純喜さんの彼女さん…なんですかね。
僕はその人をしらないですけど、
自分をここまで思ってくれる人がいるなんて、その人は幸せだと思いますよ。」
そんなことない、
私じゃ幸せにできない
"純喜くんの彼女"という言葉が胸に引っかかる。
…私、まだ純喜くんの彼女なのかな
もう、終わらせたほうがいいのかもしれない。
曖昧なままでいるから彼も悩ませてしまうし
自由に過ごせないよね。
『…もう、彼女じゃないです』
"距離を置く"という期間にあやかって、
私たちの関係を終わらせてしまおう。
彼もきっと次第に忘れていくから。
「…好きな人と両思いって、奇跡だと思うんです」
『…え？』
「簡単に手放しちゃ、だめですよ。」
その声に顔をあげると、彼もまた私を見ていて、彼の優しい瞳と目があった。
純「……おい、
なにカナのこと泣かしてんねん」
突然、後ろから声がした。
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作者名：らん
| 作成日時：2021年6月11日 1時
