オフィスを出れば(威尊) ページ10
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定時を過ぎた頃、徐々に人が少なくなる中でいまだにパソコンと向き合う私。
『あーーーー終わんない…』
「まだそれやっとるん〜？手伝ったろか」
『威尊最高、持つべきものはデキる同期だわ…』
「はよ終わらせてご飯行こうや。アヤの奢りで」
『う、はい…』
とか言って毎回奢ってくれるのは威尊なんだけどなぁ
威尊が私に抱いてくれている気持ちに気づいている…けれど、
関係を壊したくなくて知らないふりをしている。
ほら今も、資料を取るときに手を重ねてくるから。
『今月もお疲れさまでした！威尊手伝ってくれてありがとう』
「ええよ〜あのままアヤ置いて帰ったら朝まで残ってたかもしれんし」
『一言余計だよ王子』
「きゅうりの一本漬け頼もうや」
少ない同期の中でも特に仲のいい私たちは、仕事が終わっても一緒にいることが多い。
社内では王子様のようだと女の子たちに人気な彼も、オフィスを出れば素に戻る。
ビシッと締められていたネクタイもすでに緩み、シワのないシャツを腕まくりしている。
『威尊は相変わらず女の子たちから人気だよね』
「ほんま？でも色々気ぃ張ってんねんな〜』
『えぇ、どこが』
「アヤの前だけやでこんなん。特別やな」
『ああぁ潰れる、ねえ重い！』
「アヤよりは重ないはずやで」
ぐでぇ〜〜っと私にもたれかかってうりうりと私の肩に頭を乗せてくる彼を叩いて戻させると、
痛いと言いつつ嬉しそうな顔をする。
威尊ほどオンオフが激しい人はいないな。
もう酔ってきたのか、ふわふわと笑いながら見つめてくる彼になんとなく気恥ずかしくなっていると、
静かに伸ばされた彼の手が、私の頬を撫でた。
「…アヤ、最近綺麗になったなぁ」
『んっ…？！え、急になに』
「ずっと思ってるよ？綺麗やなぁ、かわいいなぁって」
『…ね、なんか変だよ。酔ってる？』
「なに言うてんの。俺が今までアヤと飲んで酔ったことなんかないで」
急に早くなる鼓動を確かに感じ、
頬に手を当てたまま親指で優しく撫でる彼の熱っぽい視線から逃げようと目を下にやれば、
いつもは見えない彼の首周りが見えてまた心臓が跳ねた。
「ふふ、めっちゃかわい。…明日土曜やな。」
『うん…？』
「仕事休みやな。アヤなんか予定ある？」
『ないけど…』
「…このあと俺の家で、もう一回飲み直さへん？」
もう知らないふりはできないみたい
彼の気持ちも、私の気持ちも。
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作者名：らん
| 作成日時：2021年9月20日 4時
