おやすみの前に (ページ9)

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ねぇ、まめちゃん(一成) ページ9

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『ねぇ、まめちゃん！今日一緒に帰ろ！！』

「おはようございます、イヤっすね」

なんで！と声は怒っているものの顔は緩みまくりのこの先輩は、俺のことを気に入ってるらしい。

最初はまぁ…アヤ先輩も顔はいいから、褒められたりすると照れてしまうときもあったけど

最近はもう慣れて塩対応もできるように。

"ねぇ、まめちゃん"

このワードを何回先輩の口から聞いたかなんて覚えてない。

話し始めに先輩が必ず言うこの二言を聞きすぎて、それだけで先輩がどんなテンションなのかわかってしまう。

『ねぇ、まめちゃん！！あのね！』

「はいはい、うるさい」

あー何かいいことあったんだな、

『ねぇ、まめちゃん…』

「今度はなにやらかしたんすか」

この時は嫌なことあったんだな、なんて

背中越しに言われてもどんな顔してるかわかるのが少し悔しい。

でも

この日だけは、聞いたことのない声だった。

『…ねぇ、まめちゃん』

「……なんかあったんすか」

『よくわかるね、さすがまめちゃん』

いつもの弾けるような笑顔でも、不機嫌な顔でもなく

力なく、辛そうに笑った。

なにその顔

俺の知らない顔、しないでよ

『まめちゃんさ、一応ダメ元で聞くけど、私と付き合う気はあったりする？』

「なんすか急に笑」

『…なんとなくだよ』

「…あー…まあ、考えたことはないっすね…」

『だよね』

だからさ、その顔しないでって

無理して笑ってるの、俺わかるから。

ほんとはもっと言うことあるんでしょ

『さっき、告白されたの。同じクラスの人に』

「は？…ぁ、そうなんすか」

『元々仲は良かったんだけど、そういう目で見たことがなくて。…でも正直迷ってる』

「…その人と付き合うかどうか？」

『うん』

もし、もしアヤ先輩がその人と付き合えば

もう俺のところにこうやって話しかけにくることがなくなるということ。

あの俺を呼ぶ声を、もう聞けなくなるということ。

あー…

それは、なんか…嫌かも。

「…だめって言ったら、怒りますか」

『…え？』

「付き合うのはだめです。

　…先輩と話せないとか、俺も困るんで」

きょとんとして目をまんまるにする先輩

その顔も、初めて見たかも。

…俺がこんなに顔が熱いのも、初めてだけど。

『…ねぇ、まめちゃん』

「なに」

『それって、私のこと好き…ってこと？』

「……そうかも」

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