おやすみの前に (ページ4)

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一瞬で、ころり(許) ページ4

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私には最近、気になる人がいる。

名前は知らないんだけど…朝に乗る電車が一緒の人。

染めているのか、少し紫がかったふわっとした髪から覗く瞳がとても綺麗なの。

決まった時間の電車で、決まった席に座る彼。

私が最初に彼を見たのは冬で、チェック柄のマフラーを顔が埋まるくらいもこもこに巻いている姿になぜか惹かれた。

なんていうか…目を奪われるって、こういうことを言うんだなって感じ。

彼を一方的に見つけて半年経った今、彼は変わらずあの席に座っている。
夏服になって、白いシャツにベージュのベストがとてもよく似合う。

いつか話せたら…なんて、夢のまた夢。

今日も今日とて彼を見つめていると

電車の窓から差し込む朝日がちょうど彼の顔に直撃していて、眩しそうに顔を顰めた。

ふふ、かわいい…不機嫌そう。

眩しそうだな…影、影…っと

もう少し右で…よし、隠れた！

無意識に、ちょうど彼の顔が影になるように手を伸ばして影を作った。

…そう、無意識に。

できた！と満足して彼を見れば、

さっきまでの眩しそうに細めていた目ではなく、

ぱっちり、少し猫目の綺麗な瞳がこちらをじっと見つめていて

しっかりと目があってしまった。

驚いて手を引っ込めるとまた光が彼の顔に直撃し、彼が顔を顰めてしまったので急いでもう一度影を作ると、

にっこり

ふわっと花が咲くように優しく、私に微笑みかけてくれた。

ずきゅん、と

心が撃ち抜かれた音がした。

時が止まったように動けなくなっていると、彼の高校の最寄り駅についた。

ゆっくり立ち上がった彼は、もう一度私を見て

優しい笑顔のままお辞儀をして降りて行った。

…やばい、

どきどきが止まんない。

気になる人が好きな人へと変わった瞬間だった。

次の日の朝、電車に乗りいつも通り彼を探すけれど、いつもの席にいない。

…あれ、寝坊したのかな

会いたかったな…と落ち込んでいると、

とん、と優しく肩に何かが触れて

振り返れば、彼だった。

「あの、昨日はありがとうございました。お礼言えなくて、ごめんなさい」

『へっ…？！いや、こちらこそ…っ』

初めて聞く彼の声が、私に話しかける声だなんて

急加速した心臓はもはや私の意思ではどうにもできない。

「ずっと、話したくて…チャンス待ってました

　お名前を…教えてくれませんか？」

彼と出会って半年

なにかが、変わる予感がします

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