おやすみの前に (ページ26)

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今日をどうやって過ごしたか、覚えてない。

時間をかけた姿は一瞬にして涙で崩れ、気づけばもう夕方。

メイクも落とさずに寝たら今までの努力が水の泡だと言う意識から、
重たい身体をなんとか動かし、お風呂に入って全て落とし切った。

さっぱりしたらお腹がすいて、ストレスからか大量の料理を作っていたとき

携帯の通知に気がついた。

…京介？

名前を見た途端、落ち着いてきていた心がまたどくんとはねた。

京介開けて
京介会いたいから

その文字にひどく動揺してしまう。

開けてって、何？ドアの前にいるの？

通知が来ていたのは20分前。待つことを嫌う彼ならとっくに帰っている

でも一応…確認だけ。

早まる鼓動の中、そっとドアを開ければ

小さく蹲る彼の姿があった。

顔を上げた彼と目が合い、驚きで思わず閉めようとしたのを彼によって防がれた。

「…入れて」

『…はい』

目の圧に押されて中に入れると、慣れたようにリビングへと向かっていく。

突然のことへの動揺と、久しぶりに会う緊張とでまた感情がおかしくなる。

会えないって…言ったじゃん

遅れてリビングへ入ると、すでに座っている彼に隣を指さされた。

恐る恐る座れば、ふぅとため息のような声。

何を言われるのか、こわい。

『…仕事は？』

「終わらせた。時間作るって言ったじゃん」

『でも今日は、会えないって』

「そりゃ無理言って助けてもらったから」

『え…なんで』

「会いたかったから…俺も、アヤに。」

夢みたいな言葉が京介の口からでて、それだけでまた涙がぶり返してきそうになる。

会いたいって、思ってくれたんだ。

私だけじゃないんだ。

普段言わないようなことを言って本人もむず痒いのか、目線は合わない。

でもここに京介がいるということだけで十分だ。

「今日来れたからってこれから会える頻度が増えるわけじゃないけど、誤解はしないで。

俺が頑張れてるのは、全部アヤのおかげ。

毎日の連絡と、たまにくれる電話でなんとか…耐えれてるから。」

本当は会いたいけどね、と付け足す彼がどうしようもなく愛おしくて、

彼に思い切り抱きついた。

うわ、と声を上げつつも、ぎゅうっと力が込められる腕に涙が溢れた。

なんで今なの、すっぴんなのに、とか

言いたいことは山ほどあるのに。

口から出るのは、この言葉だけ。

『…京介、だいすき』

「俺も、…好き」

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