おやすみの前に (ページ3)

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俺だけがいいの(景瑚) ページ3

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休み時間、水分を取ろうと何気なく水筒に手を伸ばしていると

頭にずしっと重みを感じた。

「アヤちゃん、俺にもお茶ちょ〜だい！」

『またぁ？持ってきてないの？』

「ん、忘れたの♡」

『持ってくる気ないくせに』

「んはっバレた？」

にんまり笑って、私の水筒を慣れた手つきで開けて

口をつけずにいわゆる"滝飲み"をするのは、佐藤くん。

なぜか私の家のお茶を気に入ってるみたいで、よく飲ませて欲しいとお願いしに来る。

前に彼も自分のお茶を持ってるのを見たし、なんなら自動販売機もあるんだから買う方がいいんじゃないかと聞いたのに

"俺はこれが好きなの！"の一点張りだった。

「やっぱ美味しい、アヤちゃんちのお茶」

『そう？変わんないと思うけどなぁ』

「変わるよ俺の気分とか」

『なんの話？笑』

大きいワンちゃんのように寄ってくる彼をかわいいと思ってしまうぐらいだから

私も嫌だとは感じないし、むしろ人気者の佐藤くんと話せる機会があって嬉しい。

満足すると、また来るねと少し乱れた私の前髪を撫でて元のグループへと帰っていく。

ある日いつものように佐藤くんが寄ってきたのでお茶をあげていると

彼の友達も私たちのところへ来た。

友人1「景瑚また新井さんのお茶飲んでんの？」

友人2「えー俺らも飲んでみたいんだけど！」

「えっなんでよ！！ダメ！！」

友人1「なんでだよw 景瑚がうまいって言うから気になったんだよ」

「ダメ！俺しかダメなやつ！！ね、アヤちゃん嫌だよね？」

『私はいいけど…』

「えっなんで？！ぜっったいだめ、渡さないから」

なぜかすごく焦って、私の水筒を高く上に上げて嫌がる佐藤くん。

クラスいち背の高い彼にそうされると誰も届かない。

シャーと噛みつきそうなくらいに友達に威嚇して追っ払った佐藤くんは、

頬を膨らませて不機嫌になってしまった。

『…佐藤くん？』

「なんでアヤちゃん、俺だけじゃないの？誰にでもあげちゃうの？」

『なんでって…なんとなく？』

お茶が美味しいって言われて悪い気はしないもんね。

そう思って言ったのに、も〜〜！とさらに膨れたと思ったら

「俺はアヤちゃんのこと好きだからアピールとして近づいてんの！！

　俺以外と仲良くするとか無理だから！！」

彼の大きい声に教室中が静まり、赤面した佐藤くんが"最悪…"と呟きながら抱きついてきた。

私たち2人がどうなったかは、また別のお話。

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