おやすみの前に (ページ12)

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及ばぬ恋の滝登り(奨) ページ12

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『奨くん奨くん』

「なあに」

『私って、あと何をすれば奨くんと付き合える？』

「そういうこと言わないようになったら。ほら早くプリント解いて」

じゃあずっと無理じゃん。

付き合ってくれるまでずっと言い続けるもん。

たった7歳差だもん

年齢差なんてそんなに大きな壁じゃない。

それ以上に、一番厄介なのは…

「いつも先生って呼べって言ってるのになぁ。奨くんって呼ぶのアヤだけだよ」

『先生だなんて絶対呼ばない。奨くんは奨くん』

「もうそんなに若くないのになぁ」

『18と25なんてほぼ一緒だもん』

なわけないだろ、と頭をこんっと突かれたけど、それさえも嬉しくて。

先生だなんて呼ぶわけない。

だって呼んだら…今以上に遠くなってしまう気がするから。

『…奨くんは、ずるいよ』

「大人はね、ずるいしめんどくさいもんだからね。

　…ごめんね」

ほら、またそうやって

勝手に好きになって、勝手に落ち込んでるだけなのに

そんな私にも変わらず優しくしてくれるから。

どうしたってこの気持ちは叶わないのに。

いつだったか、友達に奨くんが好きと言ったとき

"先生に恋なんかおかしい。歳上だから惹かれてるだけだ"って、理解してはくれなかった

私も人を好きになったのが初めてだったから、一時的なものかと思ったのに

奨くんに会うたびに大きくなるこの気持ちは本物だって気づいた。

優しい声も、笑うと目が無くなる笑顔も、少し抜けてるところも

私の気持ちを知っても拒否しないところも

全部全部、大好きなのに。

『…奨くん、わたし奨くんが好きだよ』

「…うん、わかってるよ。ありがとう」

『卒業するまで待ってろとかさ、…言ってくれないの？』

「言うだけでアヤが満足するのであれば、ね」

『気持ちは無いんでしょ。知ってる』

「…そんな顔しないで」

ほろほろと音もなく流れる涙を、奨くんは拭ってはくれない。

ただ申し訳なさそうに眉を下げるだけ。

泣いてる時くらい、オマケで抱きしめてくれてもいいのに。

そういう硬いところも好きだけどさ。

「アヤが誰よりも幸せになれるように祈ってるし、

　…これからも見守ってるから。」

…あなたがいなきゃ、その祈りも叶わないんだってば。

いつか、先生って呼ぶ日が来るのかな

そんな日なんか、来なければいいのに。

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「及ばぬ恋の滝登り」

どんなに努力してもとうてい不可能なことの例え。