おやすみの前に (ページ1)

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おやすみの前に(純喜) ページ1

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「なぁ」

「なぁアヤ、もう寝たん？」

おやすみを言って優しく抱きしめられたまま眠りについて

これからやっと深い眠りになるぞという頃

のそりと動いた彼のかすれた声に少しだけ意識が戻った。

『…どしたの、寝れないの』

「あっいや、寝とんならええんで？起きとるならと思って…」

『…ふふっ起きてたよ』

「…ありがとお」

100%寝起きで目も開かないし、純喜もそんな私に気づいてるけど

よっぽど寂しかったのか無理に寝かせようとしない。

むぎゅっと後ろから抱きついている彼は少しだけ頭を上げて話しているのか、

すぐ耳元に彼の声が聞こえてくすぐったい。

甘えた猫のような声で、"こっち向いて…"とつぶやく彼。

徐々にはっきりしてくる意識をどうにか保ちながら、ころんと彼の方に向くと、いつもの半分くらいしか目を開けずにふにゃっと笑う彼の顔がすぐそこに。

「なんかな、別に寝れんわけじゃないねん」

『うん』

「でもな、なんかちょっと話し足りへんなって」

『最近忙しかったからね』

「ん…ごめんな」

『ううん…純喜が毎日ここに帰ってきてくれて顔見れてるだけで幸せだよ』

「……ほんまに、好き」

『うわっ』

目尻をふにゃんと下げて、ぼんやりついた明かりの中に純喜の瞳がうるうると揺れているのがわかる。

私の頭の後ろに手を回してぎゅうっと彼の胸元に抱き寄せられ、すりすりとすり寄る彼。

最近は会える時間なんてほぼないくらい忙しくて

仕事に全力を注ぐ純喜だから、彼が本当に力を抜ける時間も少なくなっていたんだと思う。

仕事も大事で頑張ってるのは、十分すぎるくらい伝わってる。

安定のないお仕事柄だからこそ、考えることも多いはずだから

そんな彼のすべてをさらけ出せる場所に私がなりたかった。

なれてるのか、と聞かれたら堂々と答えられないけど

「ほんまに、アヤがおるって考えただけで頑張れるんやで、俺って」

『…私もだよ』

「どこも行かんとってな…アヤ」

彼の声と抱きしめる強さで、少しは彼の力になれているのかなって思える。

みんなに元気を与えるのは純喜のお仕事だけど

その純喜の元気が無くちゃだめだよね。

アヤ、アヤ…とぼそぼそ呟きながらだんだん私に回っている腕が重くなってくる。

見上げた先の半開きの口に短くキスをして、私も目を閉じた。

「アヤ、愛してんで…」

小さく聞こえた声は私の夢だったのかもしれない。

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